心カテ

ELCA エキシマレーザーとは?

ELCA:エルカはレーザーを照射することによって組織を「蒸散」させる特殊な冠動脈形成術の手技のひとつです。

主にACSの時に問題になる血栓に対してエネルギー照射して蒸散、除去を行います。
ISRや動脈硬化組織にも効果があり、0.014inchのガイドワイヤーを用いて治療します。

今日のレーザーの使用は
下肢領域でステント内再狭窄、デバイス領域ではリード抜去で使用されることができます。
今回は冠動脈領域に関してまとめます。

ELCA:Excimer Laser Coronary Angioplasty の略となってます。

 

エキシマレーザーとは?

ELCAは塩素とキセノンの混合ガスを用いて308nmのレーザー光を発生させて治療を行います。
簡単に言えば紫外線を用いた治療方法です。

このレーザー光を用いて組織の分子結合を切り離し、小さな分子へと変える効果があります。
水やガス、10ミクロン以下の小さい物質まで病変物質が変化し吸収されていきます。

照射時の温度は40°前後であり、血管周辺の組織への損傷がまずないとされています。


ELCAのカテーテルは基本的に
0.9、1.4、1.7、2.0mmのサイズバリエーションがあります。

ELCA size(mm) 適応ガイディングカテーテル (Fr)
0.9
1.4
1.7
2.0

ELCA コンパチビリティ

カテーテルの構造も「エキセントリックタイプ」「コンセントリックタイプ」の2種類あります。
エキセントリックタイプはワイヤールーメンが中心から外れており、
コンセントリックタイプはワイヤールーメンが中心にあります。
冠動脈領域ではコンセントリックタイプが使用されています。

出力はおおよそ、30-80(mJ/㎟)で、数値が大きいほど大きい効果が得られます。

「on/off time」と言われる照射インターバルも多くは
5秒の照射後、10秒待つインターバルのものが多いです。

ELCAのメカニズム

  1. 光化学的作用
    分子間結合の破壊
  2. 光熱的作用
    水分気化による細胞崩壊
  3. 光力学的効果
    気泡の膨張と崩壊による組織破壊

これらは一つの流れになっており、
光子が組織に当たり、吸収される際に振動が起きて分子結合が崩壊します。さらに、振動によって水分が気化します。
気化によって発生した蒸気が破綻する過程で力学的エネルギーに変換され、それが組織にあたることで分解蒸散することができます。
結果的には、赤血球よりも小さな粒子にすることができるとされています。

振動作用が組織を柔らかくしており、
レーザ使用後はバルーン拡張によるpreperationが良好、indentationが取れやすいことがあります。

レーザはカテーテル先端から0.05~0.1mmに作用するとされています。

他にも血小板にも作用すると言われており、
小さくすることで凝集能をさげることができると言われているようです。(stunned platelet)
PMID: 11686328

ポイント


分子結合の破壊
振動による組織破壊
力学的エネルギーによる分解蒸散
(+α 凝集能の抑制)

基本的な使用方法

イメージングデバイスで病変を確認しレーザーのサイズを決めます。
分岐部病変や屈曲病変などに使用する際には大きいサイズよりは小さいサイズ選択が安全のようです。
血管径に対して2/3サイズや1mmダウンのものを選ぶなど。

ガイディングカテーテルのサイズによって使えるレーザーサイズが異なることに注意
上の表を参照

キャリブレーション後はスタンバイ状態にしておきます。
※誤って照射して、目にあたると最悪失明してしまう恐れがあるため

病変部にガイドワイヤーをcrossさせ、レーザーカテを進めます。
レーザーを照射しながら引いていく場合にはレーザーカテを病変より遠位まで進めます。
※専用のガイドワイヤーはないのでDr好みのワイヤーで使用可能


照射する前にはガイディングカテ内や冠動脈内に造影剤が全くないように十二分にフラッシュします。
造影剤があると照射時に大きなエアーを発生させやすくなるためで、
このことが1番重要ともいえます。
空気塞栓や血管障害を予防するためにしっかり生食でフラッシュする。


照射している時はゆっくり進めて治療をする。
目安としては約0.5~1mm/secの速さで動かす
進めている時に抵抗があると予定外の場所への照射や血管内形成物を末梢へ飛ばす恐れがあるため、
ゆっくりカテーテルを進める。

ポイント

血管径の2/3 or 血管径から -1mmのものを選択

GC、血管内の造影剤を必ずフラッシュする

レーザはゆっくり動かす(目安0.5~1.0mm/sec)

専用ワイヤーは無い

適応病変

血栓が多いACS、大伏在静脈狭窄、びまん性病変、ISR、中等度石灰化、バルーンやマイクロカテ不通過病変などが適応です。

実際の使用感としては石灰化病変には効果が薄いようです。
しかし、eruptiveな石灰化結節に対しては効果が大きいようです。

加えて、血栓の蒸散がslow flowの発生予防にも有効な可能性があるようです。

CTO病変でwireが通ったが、バルーンやマイクロカテが通らない時に
CTOの入口を少しでもmodifyすることで次のステップに繋がることがあります。
注意として、あくまでもwireが血管内、intra plaqueが前提です。

使用上の注意、合併症

使用上の注意
・レーザは100V対応コンセントが必要
・カテ室の入口に「レーザ使用中」の警告を表示する
・準備する際には防護メガネを着用する
・レーザ光を直視しない、反射光にも注意する


・解離、穿孔
通常の解離と同様の対応を行う。
押しで行っている時や、分岐部の治療中に比較的怒りやすいので注視する。

・血管攣縮
血管拡張薬(ニコランジルやミリスロールなど)を冠注する。

・slow flow, no reflowや血栓症
レーザで蒸散させても微小血管で塞栓が起きることはある。
蒸散しきれなかったプラークが遠位部で塞栓し得る。

及川 裕二 (編集)
伊藤 良明 (著, 編集)

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