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DCB:Drug Coated Balloon 薬剤コーティングバルーンとは?

DCBとは”Drug Coated Balloon” の略語です。
狭窄を抑制させる薬剤が塗られているバルーンであり、主にISRやの治療や細い血管に対して使われることが多いです。

今回は、DCBについてまとめていきます。


DEB : drug eluting ballonと言われることもあります。

・冠動脈に使えるのDCB

現時点では冠動脈治療に使用できるDCBは以前は一つしかありませんでした。

"SeQuent Please Neo" ニプロ株式会社

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製品添付文章ダウンロードページ 

2023年より新しくボストン社のものも使用することができるようになりました。
"AGENTTM" ボストン・サイエンティフィック

製品ページ 
製品添付文書 

EVT領域ではINPACT, Ranger, Lutonixの3種類から選ぶことができますが、
PCI領域では2種類のみとなっています。

 

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・使用されている薬剤はパクリタキセル

パクリタキセルは抗ガン治療に使用される薬剤です。
胃癌、子宮体癌、乳癌、非小細胞肺癌などなどです。

もちろん、PCIはがん治療ではないのでDCBでの役割では異なっています。
パクリタキセルの薬効薬理、薬の作用方法に注目します。

「パクリタキセルはタキサン化合物である。タキサン化合物は微小管を形成するチュブリンの重合を促進して微小管を過剰形成・安定化させ、脱重合を抑制することによって細胞分裂を阻害し、抗腫瘍効果を発揮する。」

とパクリタキセルの薬剤添付文書に記載されています。

もう少し詳しくまとめると,,,
細胞の増殖は分裂によって起きます。
分裂時に微小管という管が必要で、それがまず束になり、その後束がばらばらになる過程があります。
パクリタキセルはその微小管を過剰に形成して安定化させるので細胞分裂を阻害します。

この流れによって(再)狭窄を抑制させることができます。


ややこしくなってしまいましたが、要は
「細胞分裂を抑制させて狭窄を防ぐ」ということ

なのでパクリタキセルをしっかり血管内壁に塗ることが必要となります。

ポイント

パクリタキセルを塗って細胞分裂を抑制することで、狭窄を防ぐ

・バルーンをしっかり圧着させる

パクリタキセルの効果をしっかり発揮させるために、DCBをしっかり圧着させる必要があります。
なぜかというと、パクリタキセルはしっかり塗ることができて初めて意味があるからです。

なので血管径に合わせてしっかり拡張させます。
この時の拡張時間が長く、添付文書上では「30秒」と記載されています。


穿孔が起きている時やパーフュージョンバルーンを使用している時でもない限り、
30秒という長い時間拡張することはまずないと思います。


しかし、先に記述したようにパクリタキセルをしっかり塗布するために
致し方なく、ロングインフレーション(長い時間拡張)しなければいけません。



なので、拡張時には患者さんの容態やECGの変化に注意してください。


ポイント

・拡張時間は30秒
・拡張中に患者、ECGに注意



・適応

まず禁忌として
・パクリタキセルにアレルギーがある
・造影剤アレルギーがある
・妊婦、産婦、授乳婦である
・心原性ショックである

などの項目があります。
やや、ニプロ社のものと、Boston者のもので禁忌の記載が異なります。


基本的にはDCBを使用すことができる疾患は

・ISR(in stent restenosis)
・3mm未満の小血管

となっています。ISRであれば3mm以上にも使用可能です。

※2023年9月より、条件下のもとであれば3mm以上の新規冠動脈病変にも使用できることになりました。



・DESのISRに対してDESをおくか、DCBを使うか

DES-ISRの時に再度DESを留置するか、DCBで治療するか...

実際にどちらがいいかというと、まだ明確な有意差はない。

なのでどちらでもいいというのが今のところの正解なのではと思います。
事実としてドクターの考え、方針によってまちまちかと思います。

文献的な話をすると
2020年のJACCにて
DCB使用の方がDESよりもTLRは3年フォローで多かった。
しかし、MIや死亡率、血栓に関してはDCBの方が少なかった。
という有意差はないものの、傾向があったという報告があります。
Giacoppo.D.et al. JACC 2020;75(21)2664-78

なのでガイドライン上でもDCBでもDESでクラスⅠとなっています。
安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018 年改訂版)

・薬剤の流出

DCBはバルーン上にパクリタキセルが塗布されています。

しかし、病変へデリバリーする間にバルーン上から流出することが起きてしまいます。
たとえば、バルーン部がGCや血管壁に当たることでパクリタキセルが剥がされてしまいます。
血流にさえ剥がされてしまうと言われています。

実際にバルーンを拡張して病変にパクリタキセルを付着できる量は十数パーセントと言われています。
人によっては一桁、数パーセントとさえ言われています。
(梱包から出した状態の量を100%として)

なので梱包から出された後、バルーン部を触ることは避けるべきです。

ドクターによってはDCB使用後はIVUSやOCT、OFDIなどのイメージングさえ拒む方もいるとかいないとか・・・

ポイント

パクリタキセルが流出してしまいやすいので扱いに注意



西日本コメディカルカテーテルミーティング (著, 編集)
及川 裕二 (編集)
伊藤 良明 (著, 編集)

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