コメントで頂いたということもあり
今回はOCT/OFDIにおけるpush法に関してまとめていきたいと思います。
ご存じの通り、OCTやOFDIは血球成分を造影剤や低分子デキストランを用いて
フラッシュしている間に血管内を観察するデバイスです。
しかし、高度な狭窄などによって血球成分がフラッシュできないことがあります。
そんな時に行う手技として「push法」と呼ばれるものがあり、今回はご紹介させて頂きたいと思います。
プッシュ法とは一言で言うと造影してからOCT, OFDIをプラークよりDistalにデリバリーして記録を開始する手技です。
余談ですが、日本人医師が発評した論文で
「低分子デキストランを用いたOCT使用PCI」は「IVUSを用いたPCI」との比較で
腎機能への影響は長期、短期ともに劣勢ではなかったという報告があります。
DOI:https://doi.org/10.1253/circj.CJ-20-0093
つまり、低分子デキストラン使用OCT治療は腎機能においては問題ないよね!
と解釈できる報告なっております。
※OCT,OFDIの時に低分子デキストランをフラッシュ用として使うのは適応外使用として、
使用する事を好まない施設もあるとかないとか...
OCT/OFDIのスキャン時 (usually)
血管内をスキャンする時にはまずイメージングデバイスを
標的病変をpassすることが大前提となります。下図
イメージングデバイスがプラークをpassしたら病変遠位部が造影されるかテスト造影をします。
血球成分がフラッシュできなければ、描出できませんので
基本的には少量の造影剤が遠位部まで流れるかテスト造影します。
(テスト造影で病変遠位部まで造影剤が流れれば基本的にはフラッシュできるはずです)
その後、造影剤などで血球成分をフラッシュしている間に
スキャンを開始しlens markerが移動することで血管内を描出することができます。下図
「Push法」時のスキャン方法
今回の本題でありますPush法(プッシュ法)をする時の方法などについてまとめます。
push法を簡単に言うと
「造影剤で血管内を満たしてからイメージングデバイスを進めて、スキャン開始しよう!」
といったことになります。
順を追って説明していきます。
push法が必要な状況
そもそもpush法を行う時がどんな時か...
プラークが絶妙に狭くて、
イメージングデバイスは通過するけど造影剤が流れる隙間がない
という時がpush法の出番となります。
注意
イメージングデバイスをpassさせて造影剤が遠位部に流れない時は
血流も途絶えさせている可能性も大きいので
心電図変化や胸痛の出現などに注意
Push法の手順
Push法は術野とスキャン開始者の阿吽の呼吸が必要です。
二人羽織ならぬ三人羽織するくらいの手技とも言えます。
一般的に役割としては3役必要です。
・イメージングデバイス操作者
・造影実施者
・スキャン開始者
カテーテル操作者は
プラーク手前までイメージングデバイスを進めます。
イメージングデバイス操作者はプラークよりも遠位部が造影されたことを
アンギオ上で確認したらすぐにカテーテルをプラーク遠位部まで進めます。
進めたら同時にスキャン開始を声掛けします。
スキャン開始者は
イメージングデバイス操作者の声掛けと同時に画面操作で
スキャン開始を実施します。
造影実施者はスキャンが終わるまで造影し続けます。
途中で造影を辞めるとスキャン不十分になりかねません。
文字列にするとやや複雑、忙しそうにも見えますが、
3役各々が行う作業自体はそれほどでもないです。
表で簡単にまとめます。
イメージングデバイス操作者 | 造影実施者 | スキャン開始者 |
プラークまでイメージングデバイスを進める | ⇩ | ⇩ |
⇩ | テスト造影 | |
⇩ | キャリブレーション(校正) | |
透視撮影 | 造影実施開始 | ⇩ |
プラーク遠位部の造影されてからデバイスを進める | 造影継続 | |
スキャン開始の声掛け | 声掛けと共にスキャン開始 | |
スキャン終了 |
この表を見れば各々のタスクの量は多くないのではないでしょうか...
次に図でさっと流れをまとめてます。
Push法時のちょっとしたtips
普段通りのスキャン時にも通じることでもありますが、tipsを少し挙げてます。
Push法は造影してからイメージングデバイスを進めるため
やや造影量が増える傾向になるかと思います。
そのため、低分子デキストランを用いて手押し造影で行うこともあります。
Auto injectorを使用しないので造影時間も調整しやすいです。
※シリンジを押し続けるだけで済む
造影剤量を減らすために
ガイドエクステンションを用いる方法もあります。
特にLCAの治療では造影すると
LADとLCXの両方に造影剤が流れてしまいます。
そこでガイドエクステンションを用いることで
LAD or LCXに対して選択的に造影できるようになります。
これは普段のOCT/OFDI施行時にも使えるtipsです。
※内腔径0.055inch、1.40mmあればOCTもOFDIも使用できます
スキャン実施者が注意することは
システム画面でフラッシュが確認されているからと言って
スキャン開始を安易にしないことが大事です。
Push法はプラークをpassしてからスキャン開始をするので
造影してすぐのフラッシュ像はまだプラークをpassしていません。
あくまでもスキャンのタイミングはスキャン開始の声掛け時に
ルール決めした方が成功しやすいです。
※普段からスキャン開始の声掛けにルール決めしていれば問題ないです
ポイント
・低分子デキストランの使用
・ガイドエクステンションの使用
・スキャン開始は声掛け時にルール決め
今回はご要望を頂いたこともあり、
「Push法(プッシュ法)」についてまとめさせていただきました。
少しでもカテーテル治療に携わる方のお力に添えられれば幸いです。
余談、本末転倒な内容になりますが、プラーク遠位部が造影されない時や
そもそもイメージングデバイスが進まない時などはバルーンで前拡張するのも手の一つです。
イメージングデバイスはおよそ3Fr、ワイヤー(0.014inch)がおよそ1Frなので合計4Frです。
「4Fr÷3」でmm換算すると約1.33mmとなるので
1.5mmか2mmで前拡張、pre バルーンすることでイメージングデバイスが通過することはもちろん、
indentationが取れれば造影することもでき、Push法をする必要が無くなる可能性があります。
必要以上のバルーン数が増えてしまい、保険償還の問題が出てくる可能性もありますが、、、