心カテ

分岐部病変に対するステント留置法 T-stent? Crush? Culotte?

分岐部でのステント留置は悩ましいです。

もちろん、ステントレス、ステントを使わずに終われるのならそれに越したことはないです。
が、しかし、現状ではステントを使う事の方が多いと思います。


時に、LAD-CXやLAD-D1といった分岐部ではステントがどちらも必要な事があります。
ましてや側枝側の近位部(Ostium)にもステントを置きたい時には悩ましいです。



ステントという異物はできる限り留置したくない前提がありますが、
仕方ないこともあります。

たくさんステントを入れるのは血栓症のリスクがあがりますし、
分岐部へのステント留置は煩雑な手技が多いです。

なのに、ステントを分岐部に・・・となります。



今回は全てとはいきませんが
分岐部におけるステント留置法をいくつか紹介します。

コメディカルとして医師がどんなことをしているか
理解できるようになれるように共有できればと思います。

2024/2/11 更新



・T-stenting

T-stentingはできあがりの特徴が

「ステント同士が接しない。干渉しない。」

かと思います。
ステントが密になるところがないので異物密度が高いところはありません。

しかし、本幹と側枝が90°の屈曲でない限りギャップが生じてしまいます。
(ギャップとはステントでカバーできていない部分のこと)

ギャップがあるとそこにプラークが形成されて、そこが再狭窄になってしまうことがあります。
なのでギャップが生じてしまうのがデメリットとも言えます。


メモ

簡易手技手順

  1. 側枝にステント留置
  2. 本幹にステント留置
T-stent


上図右側のT-stent完成図でにおいて
側枝起始部でステントが無いような所をギャップといいます。

また、本幹からステントを留置した後に側枝にステントを置くT-stentもあります。
(ステントを置く順が逆)

その時は本幹にステント留置した後にワイヤーを通して、ストラット(ステントの網目)をバルーンで拡張します。
本幹ステントのストラットを広げることで、側枝用のステントが本幹のステントのストラットを通過することができるようになります。

本幹にステントを置いた後に側枝がプラークシフトして閉塞してしまった時などに行うことがあります。

ポイント

T-stent
ステントの金属部分が密にならない
ギャップが生じてしまう

・Crush stenting

Crush stentingはギャップがないステント留置テクニックです。


メモ

簡易手技手順

    1. 本幹にはみ出るように側枝にステント留置
    2. 本幹側をPOBAして側枝のステントを血管壁に押しつぶす
      ※この時側枝のワイヤーは抜いておく
    3. 本幹にステント留置
    4. 側枝にワイヤーをrecross
      ※distal側に通すことが多い
    5. KBTを行ってステントを圧着させる

Crush

KBTをする時のワイヤーリクロスはDistal側から行うようにする。


一度、側枝ステントの出ている部分を潰してしまうのでワイヤーリクロスが難しいことがあります。
慣れている医師でなければ、やや時間がかかることがあると思います。

また、carina部分は若干ギャップができます。
これは、distalをリクロスしたKBTなので仕方のない結果です。

ポイント

Crush stent
ステント間のギャップが少ない
手技がやや煩雑になる
KBTは主に1回

・DK-Crush stenting

DK-CrushのDKは「Double Kissing」の略です。
なのでDK-Crushは2回KBTをします。

初めのステント留置は普通のCrush stentingと同様です。


一般的には、DK-Crushの特徴がKBTする時に側枝に通すワイヤーをproximalでリクロスします。
(KBTと同様にdistalに通す医師もいます。医師の好みによる事があります)

proximalに通すことでcarinaにギャップができにくく、しっかりとステントを留置することができます。


メモ

簡易手技手順

  1. 本幹に出るように側枝にステント留置
  2. 本幹側をPOBAして側枝のステントを血管壁に押しつぶす
  3. 側枝のワイヤーを一度抜き、proximalにリクロスしてKBTを行う
  4. 本幹にステントを留置
  5. 再び側枝のワイヤーをproximalでRecrossしてKBT
    (下画像の中ではproximal)
  6. 本幹ステントにPOTを行う

 

POT:proximal optimization technique
枝の手前のみ本幹でPOBAをして圧着させるテクニック

1回目のKBTが側枝のステントに対してしっかりとcarina側もステント圧着させることができます。

ワイヤーリクロスがproximalなのでcarina側にステントが偏ってしまいます。

時間もよりかかってしまうので合併症などに注意です。
長期的にはステントが密になるので新生内膜形成が強くなることがあります。

ポイント

DK-Crush
ステント圧着が良好
手技がより煩雑になり、時間がかかる
KBTする時のワイヤーリクロスはproximal

・Culotte stenting

Culotte stentingはCrushしていないので、一か所にステントが密になることはないです。

2本のステントが重なる部分はあります。


メモ

簡易手技手順

  1. 側枝にステント留置
  2. POT
  3. ストラットを拡張
  4. 本幹側にワイヤーリクロスしてステント留置
  5. POT
  6. 側枝へワイヤーリクロス
  7. KBTを行って圧着させる

Culotte stenting

側枝に留置するステントは本幹手前までカバーされる長さを選びます。

ワイヤーリクロスしてステント留置する時、KBTする時は主にproximal側をリクロスすることが多いそうです。
必ずproximalというわけではなく、distalでリクロスすることもあるみたいですが・・・

この違いの詳細は私にはわかりません。

ポイント

Culotte stenting
ステント2本がproximalで重なる置き方
Crushでないため,一部にステントが集中することはない
手技がやや煩雑





ちなみに、ここでは側枝からステント留置で紹介しましたが
場合によっては本幹からステント留置することもあるそうです。

さらに、1本目のステントを留置する時にKBTをする医師もいるようです。
やはりこの手技も医師毎に細かい手技の違いがあるようです。


余談ですが
Crushu stentingとCulotte stentingでどちらの方が予後が良いかという文献があります。
結果から言うと、有意差はありません。
つまり、どっちも変わらないという結果が出てます。
MACE発生率:Crush 4.3%, Culotte 3.7%のようです。

「Randomized Comparison of Coronary Bifurcation Stenting With the Crush Versus the Culotte Technique Using Sirolimus Eluting Stents」
Andrejs Erglis:riginally published1 Feb 2009https://doi.org/10.1161/CIRCINTERVENTIONS.108.804658Circulation: Cardiovascular Interventions. 2009;2:27–34
https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCINTERVENTIONS.108.804658


また、CulotteとDK-CrushではCulotteの方がMACE発生率が高いというデータがあります。
文献1
Clinical Outcome After DK Crush Versus Culotte Stenting of Distal Left Main Bifurcation Lesions: The 3-Year Follow-Up Results of the DKCRUSH-III Study : Shao-Liang Chen 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26315736/
文献2
Comparison of double kissing crush versus Culotte stenting for unprotected distal left main bifurcation lesions: results from a multicenter, randomized, prospective DKCRUSH-III study : Shao-Liang Chen
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23490040/

・TAP stenting

広義的には「T-stent」となっています。

TAP ステントは側枝のステントを本幹側でプロテクトするものとなっています。

本幹側で側枝のステントを押しつぶすことにはなりますが、ステント間のギャップを無くすことができます。

メモ

簡易手技手順

  1. 側枝にワイヤーを通した状態で本幹にステント留置
  2. 側枝のワイヤーをdistal側からrecrossしてKBT
  3. 側枝にステント留置
    この時に本幹側にはバルーンを残しておく
  4. 再びKBTを行ってステントを圧着させる
  5. POTを追加
3.のの「本幹側にはバルーンを残しておく」というのは
側枝にステント留置した後、本幹にバルーンを通過させようとすると、
難渋することがあるためです。

TAP

・まとめ

いくつかの分岐部に対するステント留置方法をまとめました。

実際の臨床では若干医師によって手技が異なっていることもあります。
各々の留置方法の大まかな仕上がりを理解しておくことで

「医者が何をしたいか」

がなんとなくつかめるようになると思います。


私自身もまだまだ全貌をつかめていません。

聞くところによると SPRINT technique というものがあったり、
ステントの種類によっても手技を工夫していたりもするようで奥が深いです。。。

新しい知識が付いたらまた、共有していけたらと思います。

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