ショックウェーブとは冠動脈内に形成された石灰化に対して使うバルーンデバイスです。
従来であれば主に
「ロータブレータ」「ダイヤモンドバック」
が使用されてきていると思います。
こういったデバルキングシステムでなくでも
「カッティングバルーン」「スコアリングバルーン」
といったバルーンなども用いて治療しています。
ここ最近ではこれらに加えてnewデバイスの「IVL」が市場にでています。
バルーン内部に衝撃波を加えることのできる機能が組み込まれており、
血管の中から石灰化に亀裂、割れ目を作ることを目的としたデバイスとなっています。
ロータブレータやダイヤモンドバックでの治療方法とは
また違うアプローチとなってます。
どちらかといえばカッティングバルーン寄りな治療方法かと思っています。
ポイント
石灰化に対するバルーンデバイス
石灰化に亀裂、割れ目を作るためのもの
IVLのスペック
サイズバリエーション 直径 2.5mm 3.0mm 3.5mm 4.0mm / 長さ 12mm
最大パルス 80回
適応ガイディングカテーテル 6Fr
適応ガイドワイヤー 0.014inch
健常な血管は傷つけない
基本的には発生させた衝撃波は正常血管には影響を及ぼしません。
あくまでも石灰化に対してのみ衝撃波が与えられます。
(音響インピーダンスの違いから)
正常な血管は柔らかいため、音という衝撃波を吸収してくれるから
影響がほとんどないとイメージしてください。
一方で石灰化のような硬い組織は
衝撃波を吸収できずに響くので亀裂を作ることができます。
ロータブレータにおけるディファレンシャルカッティングと同じようなものです。
(石灰化だけ削れ、血管自体は削れにくいといったもの)
ポイント
硬い石灰化組織に対して有効に衝撃波を与えられる
適応病変
CVITの方からIVLを使用するにあたっての
適正使用指針が出ており、それを満たさなければ適応外とみなされる場合があるので注意です。
その指標ではIVUSやOCT/OFDIを用いたスコア分類となっているので
イメージングデバイスの使用が必須となっています。
下の表で計3ポイント以上のスコアがあり、IVLが通過する時のみに使用することができます。
OCT/OFDIの方がIVUSよりも石灰化評価に長けているため
IVUSの方が3ポイントを取るハードルが高いです。
使い方
IVLサイズ選び
IVLのサイズ選択はIVUSやOCT/OFDIで病変を見てから決めます。
欧米ではこれらのイメージングデバイスを使う事が少ないため、
Angio撮影の画からサイズ選択しているようです。
基本的には対象血管径:バルーン径が1:1になるサイズを選びます。
Drの考えによってややサイズ選択に差があります。
石灰化に圧着できればいいと思えば内腔径ジャストのバルーンを選びます。
強く圧着させ、バルーンとしての拡張効果も得たいと思えば
血管径や内腔径+0.5mmサイズupしたIVLを選択することもあります。
バルーンのエアー抜きは造影剤と生理食塩水を1:1で混合させたものを使用します。
拡張、作動
IVLは衝撃波が出る箇所が2か所あるので、
一番衝撃波を与えたい石灰化部位を2点で挟むように、バルーンをポジショニングします。
(衝撃波が出るところの直上には合わせない)
バルーンを4atmで拡張してバルーンを内腔壁に圧着させます。
(メーカ推奨4atm)
「1クール」、「10パルス」を2セット同じポジションで使用します。
つまり、20パルス照射します。
(メーカ推奨で3セット, 30パルス以上は効果が期待できないとされています)
作動させるのにはハンドコントローラの「therapy」ボタンを押します。
パルス後には6atmまで拡張させて血管内腔を拡大させる。
病変長が長く、オーバーラップさせる時には2mmを目安にしてください。
メモ
・4atmで拡張して照射する
・照射後に6atmまで拡張して石灰にストレスを与える
・一か所20パルスまで
・オーバーラップは2mm
IVLのデリバリー
石灰化によってIVLが病変まで進められない事があります。
※多くのケースで、IVUSやOCTで病変を観察できない時はIVLも通過できない
そのような時には
・preバルーンとして2mmや2.25mm、2.5mmのバルーンで拡張
・ガイドエクステンションカテを用いる
といったことをします。
IVLは4つのサイズバリエーションがあり、それぞれに対する通過するガイドエクステンションカテは以下です。
あくまでも参考値となっています。
Guide Liner 5.5Fr, EZ Guide5.5Fr, Guide Plus STなどは抵抗が強く、推奨はされない
ポイント
サイズ選び
・イメージングデバイスを使用して基本は血管経:バルーン径=1:1
・バルーンは造影剤:生食で1:1でエアー抜き
拡張、使用
・4atmで1クール、10パルスを2セットまで
・パルス後6atmで拡張
デリバリーできない時
・preバルーン使用
・ガイドエクステンションカテを使う
エラーの一例
エラーとしては以下のものがあるので適宜対応します。
メモ
・ジェネレーター(本体)とカテーテルとの接続不良
・バルーン内の気泡
・カテーテルの上限使用期限(6hr)
・滅菌ドレープが接続部に挟まっている
・システムエラー
システムエラーの時は赤色に点灯します。
本体の電源の入れ直しをしてみてください。
IVLの特徴
IVLにはロータブレータやダイヤモンドバックとは異なる特徴があります。
メリットとしては
IVLは石灰化を削ることはしないので「slow flow」や「no reflow」の心配はまずない
円心上に広がる衝撃波を使うためワイヤーバイアスに影響されない
などが挙げられます。
注意点としては
バルーンが通過しなければ使用できない
パルス中は虚血となる
続けて使用する前に生じているバルーン内のエアーを抜く手間がある
まれに致死性不整脈を誘発することがある
などがあります。
心電図への影響
ショックバルーンでパルスを発生させている時に
心電図上で波形変化に見える影響を与えることがあります。
矢印のところが IVL によるパルスが出ている所です。
一見すると R (or Pulse) on T しそうにも見える心電図を示しています。
しかし、IVL によって発生するエネルギーは8~10μJ程度とのことで
ほぼ心室caputure してVT, Vfに移行することはないそうです。
しかし、Vfに移行してしまった症例報告もありますので注意は必要かと。
以下参照
”Ventricular fibrillation induced by a lithotripsy-pulse on T during coronary intravascular shockwave lithotripsy”
Michael McGarvey, Shivendra Kumar, Andonis Violaris, Ahmed Elghamaz, Tushar V Salukhe, James Shue-Min Yeh
Affiliations expand PMID: 33629000 PMCID: PMC7891254 DOI: 10.1093/ehjcr/ytaa416
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33629000/
集めたtips
まず初めに書きますが
このセクションの内容はLIVEセミナーなどで聞いた内容をまとめてます。
医学的文献などからのものではないので
あくまでも参考程度に読んでください。
※記事に関する責任は負いかねます。
今後、さまざまな学会で発表されてくるであろう
報告に期待している次第です。
・血管枝周囲にある石灰化に使用して解離が起きたことがある
・Crackから解離が起きたことがある(6atmでの拡張による可能性)
・500~800μmまでの厚さの石灰化に有効な印象
・石灰化の厚みが1000μmあるとCrackが入らない印象(有効な事もあった)
・厚さ1400μmmの石灰化が割れたこともある
・マイクロ Crack では十分な血管拡張は得られにくい
・偏心性の石灰化でも効果があることもある
・比較的できたばかりの石灰化にはイマイチな印象
(IVUSで石灰化がやや透けるようなもの)
・偏心性+ソフトな場所への使用は解離に注意
・石灰化結節には効きにくい
・長い石灰化には効かない印象
・6atm拡張後のイメージングで病変近位部に解離ができることがある(過拡張?)
・Rota、OAS後に使用するIVLが有効な可能性(現状併用禁止)