「PCI」について整理しましょう!!
PCI : Percutaneous Coronary Intervention
経皮的冠動脈形成術
狭くなった冠動脈を血管の内側から拡げるために行う低侵襲的な治療法のことを言います。
(対照的な治療はCABGが外科的な治療と言えます。)
目次
適応疾患
PCIは石灰や脂質といったプラークによって冠動脈が狭くなってしまった際に行う治療です。
疾患としては急性心筋梗塞や狭心症に対して行います。
・狭心症
脂質プラークや線維性プラーク、石灰化プラークにより血管内腔が狭くなり、胸痛や冷汗といった症状が出る疾患です。
狭心症の中にも・安定性狭心症・労作性狭心症・不安定狭心症といったものに分類されます。
冠動脈造影上で目視で75%以上の狭窄、左主幹部では50%以上の狭窄があれば有意狭窄とみなして治療適応となります。
目視のみの評価だけでなく、FFRといった機能評価法も用いて確定診断とすることもあります。
まれに、冠攣縮によって冠動脈が狭窄する冠攣縮性狭心症(異型狭心症)というのもあるが、この狭心症に関してはPCI治療はせずに薬物療法で治療していくことの方が多い。
・急性心筋梗塞
主に脂質プラークの破綻(plaque rupture)により血栓閉塞を起こして起きる疾患です。
急性心筋梗塞(AMI:acute myocardial infraction)はPCIの良い適応。
PCIの手技手順
簡易的なPCIの手技手順を示します。
メモ
- 穿刺部に局所麻酔
- シースの挿入
- ガイディングカテーテルの挿入
- 冠動脈造影
リファレンスやロードマップの作製 - PCI用のガイドワイヤーの挿入
- 血管内イメージングの使用
IVUSやOCT/OFDI - バルーンで病変部を前拡張
- ステント留置
- ステント留置後の血管内観察
IVUSやOCT/OFDIの使用 - 冠動脈造影
- シース抜去及び止血
実際の手技ではさらに細分化、詳細化されます。
しかし、大まかな一連の流れとして頭の中でイメージした上で
「今、PCIでどの段階にいるか」
を確認しながら手技に参加していけるとgoodです。
穿刺部位
一般的に行われる穿刺部位は
- 大腿動脈
- 橈骨動脈
- 上腕動脈
この3つが主要となっています。
一部の施設では「遠位橈骨動脈」からPCIをする事もあります。
橈骨動脈の穿刺は時間経過で橈骨の動脈閉塞が問題でしたが、遠位橈骨動脈の使用で問題が解決されつつあるそうです。
・大腿動脈
・大腿動脈のメリット
血管が太いので8Fr以上のシースが使用でき、様々な太いデバイス、物品を使用できます。
(8Frは約2.7mm)
・大腿動脈のデメリット
出血性のリスクが高いことが一番のデメリット。
結果的に術後数時間、患者さんはベッド上から移動できなくなります。
・橈骨動脈
・橈骨動脈のメリット
7Fr相当までのデバイス、物品が使用できる。
止血が容易なこと、上肢穿刺のため治療後の安静時間が短い。
出血リスクも低い。
・橈骨動脈のデメリット
使用可能なデバイスが限られる。
IABPやECMO(PCPS)のカニューレは挿入できない
・上腕動脈
・上腕動脈のメリット
橈骨動脈と同様に上肢の穿刺のため治療後の安静時間が短い。
・上腕動脈のデメリット
動脈の近くに正中神経があるので穿刺の際に神経障害を起こす可能がある。
止血は若干難しくなる
ガイディングカテーテル
ステントやバルーンを病変部に導くための筒のこと。
屈曲に強く、PCIでは冠動脈の入口まで挿入するもの。
冠動脈の入口まで挿入されているのでその出口からガイドワイヤーを出せばすぐに冠動脈内を進めることができる。
しかし、大動脈の起始部や上行大動脈の形態によって冠動脈の入口まで挿入することが難しいこともある。
ガイディングカテーテルで大切なことは
冠動脈の入口まで挿入できればガイドワイヤーやバルーン、ステントなどのデバイスを病変部まで進めるためのバックアップサポートを得ること
ガイディングカテーテルのサイズは外径で表示され,内径は製品より若干の差があるので注意。
ワイヤリング
ワイヤリングはガイドワイヤーを病変部を通過させることです。
バルーンやステントと言ったすべてのデバイスはワイヤーに乗せて病変部まで運びます。
ですので、ワイヤーが病変部を通過しなければ治療ができないので、ワイヤリングが初めの一歩となります。
病変部を通過させるためにワイヤーの適切な選択をしたり、形状を変えたり、操作が重要です。
ワイヤリングの良し悪しが治療時間に大きく関わってきます。
病変部をバルーンで拡張
バルーンカテーテルをガイドワイヤーに通し、ガイディングカテーテル内を通って冠動脈内まで進めて狭窄病変まで持っていく。
持っていったら、バルーンを病変部で拡張させて、プラークを押し広げます。
狭くなった狭窄部位を広げずにステントを置くと有効な内腔を獲得、維持できないので大事な手技です。
バルーンはインデフレータと言われる拡張器を使用して膨らませます。
バルーンを透視下でも膨らんでいるのを確認できるように造影剤で膨らませます。
空気で膨らませたら透視下では膨らんでいるか確認できない事と、仮にバルーンが破裂してしまったら空気を冠動脈内に入れてしまうことになるので危険です。
ステント留置
近年のPCIでは、ステント留置をする事がほとんどです。
ステント留置をすることで治療後の再狭窄や再閉塞の発生率が低下するためです。
※最近は体内に金属という異物を留置しないよりいいので、そういった治療方針も試みられています
ステントは何種類かの金属でできた網目状の筒のことです。
この筒を血管内に留置することでバルーンで押し広げた内腔を維持することが期待できます。
血管内イメージング
血管内イメージングによってさまざまな情報が得られます
病変の性質、病変長、解離の有無、血腫などなど。
血管内イメージングを駆使することでより安全、正確なPCIの補助となります。
ですので画像読影を正確にできることが必要となります。
・IVUS
IVUSは超音波によって構築される血管内イメージング機器です。
超音波を使用しているのでエコーと同様なものです。
血管内に入れるので侵襲的ではありますが、超音波自体は無侵襲です。
・OCT/OFDI
OCTはAbbott社製、OFDIはTerumo社製の光によって構築される血管イメージング機器です。
光の反射を用いているので解像度、鮮明さがIVUSよりも高いです。
赤血球などの血球成分にも反射されてしまいますので、
撮影の際には造影剤で瞬間的に置換した状態で撮影します。
ですので、使用する造影剤量が増えます。
その他デバイス
以上に挙げたデバイスの他にも様々なデバイスがあります。
〇組織を削る物
・ローターブレータ
・ダイヤモンドバック
・DCA
・エキシマレーザー
〇マイクロカテ
ワイヤー交換やワイヤー操作性の向上の際に使用
〇吸引カテ
血栓の吸引のために使用
〇DCB
薬剤塗布バルーン
〇コイル
血管をあえて詰める目的
などなど色々な用途のデバイスがあります。
まとめ
PCIにはたくさんの手技、デバイス、注意があります。
ましてや、術者によって方針、ストラテジーが違うが当たり前です。
しかし、どんな手技も、方針もすべて基礎は同じです。
なかなか容易なものではないと思いますが、一つ一つ知識として身に付けていけたらいいかと思います。
今後は少しずつ様々なデバイス、テクニックを紹介していこうと思います。
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