今回はちょっと特殊なマイクロカテーテルについて紹介します。
カテーテルの腔が2つあるDLC(ダブルルーメンカテーテル)
病変通過性が高いTornus(トルナス)
この2つについてまとめます。
DLCはシャフト部分が3Fr程度で若干一般的なマイクロカテよりも太いですが、
内腔が2つあることから多様な使用方法がある便利なカテーテルです。
目次
・DLC:ダブルルーメンカテーテル
ダブルルーメンカテーテルとは DLC (Double Lumen Catheter)と略される内腔が2つあるマイクロカテーテルです。正確にはオーバーザワイヤー(OTW)ルーメンとモノレールルーメンの2つが存在しています。
冠動脈領域に関しては2種類あり、
・朝日インテック社の「SASUKE」HPリンク
・KANEKA社の「Crusade Type R」HPリンク
基本的な構造は同じです。Tipの長さやカテーテルそのものの長さが異なります。
使用方法、用途
1stワイヤーを冠動脈内に進めた後にモノレールルーメンに沿ってDLCを進めます。
次にOTWルーメンから2ndワイヤーを進めて、病変や側枝に対してワイヤー操作をします。
DLCの主な用途としては以下のようなものがあります。
ポイント
- 側枝へのワイヤリングのしやすさ向上させたい時
- ステントストラット(網目)にワイヤーを通す時
- パラレルワイヤーテクニックを使う時
- リバースワイヤーテクニックをする時
- OTWルーメンから薬剤を投与する時
側枝へワイヤリングする時
主に側枝の入口部に狭窄がある場合に活躍します。
特に母血管が大きく、側枝の入口部が狭いとより操作が難しくなります。
ワイヤーのシェイピング、曲げだけではCrossできない時やマイクロカテを用いたワイヤリングだけではワイヤーCrossできない時にDLCの使用を検討します。
DLCを使うとバックアップがより強くなるので通過させやすくなります。
ステントストラットにワイヤーを通す時
ステント留置後にKBT(キッシングバルーンテクニック)を行う時に使用する事があります。
もちろん、ワイヤーのみでストラット(網目)を捉えて側枝にワイヤーCrossできることもあります。
しかし、選択的に側枝のDisatal側にワイヤーを通したい時やプラークシフトなどで側枝になかなかワイヤーを通すことが難しい時にはDLCを使用した方が正確に、容易にワイヤーCrossできることがあります。
※KBTをする時、ワイヤーはDisatal側のストラットを通して行うのが一般的
メモ
DLCを使用した方が2ndワイヤーの操作性が良い
ストラットに通しやすくなる
パラレルワイヤーテクニックをする時
1stワイヤーが狭窄部でサブに迷入してしまった時、2ndワイヤーを用いて真腔を捉えるようにワイヤリングするテクニックをパラレルワイヤーテクニックと言います。
1stワイヤーを目印(メルクマーク)にする事で造影量を減らすことができ、1stワイヤーが作ったサブへの道は塞がっている状態にもなるので2ndワイヤーで新たに真腔へチャレンジできるようになります。
特にCTO病変の際に使用する事が多いです。
1stワイヤーにDLCを用いることで、2ndワイヤーにマイクロカテを通さなくてもDLCがマイクロカテの役割を持つことができます。
結果、操作性を上げて2ndワイヤー操作が可能になります。
この時、1stワイヤーがアンカーの役割にもなり、より2ndワイヤーの操作性があがると同時に同軸性(Coaxial)を保つことができます。
※クルセードを用いたパラレルワイヤーテクニックを「クルパラ」などという事があります
ポイント
1stワイヤーが偽腔を塞いでいる状態で2ndワイヤーを使用できる
DLCがマイクロとしてバックアップ効果をもたらす
リバースワイヤーテクニックをする時
側枝が母血管よりもUターンするかのように分かれている時、シェイピングだけではワイヤーCrossできないことがあります。
そういった時にリバースワイヤーテクニックを行ってCrossするテクニックがあります。
マイクロカテでも同様の手技は可能ですが、DLCを用いることがほとんどです。
ワイヤーは滑り性能が良いものが好まれ、朝日インテックの「SION Black」を使用する事がほぼ100%です。
YouTubeに解説動画がありましたので乗せておきます。
薬剤を投与する時
OTWルーメンから薬剤を投与することができます。
このことについても、もちろんマイクロカテで行う事は可能ですが、マイクロカテでは一度ワイヤーを抜かなければいけません。
ですが、DLCではモノレールルーメンがあるのでワイヤーに沿ってDLCを進め、その後にOTWルーメンから薬剤を投与することができます。
No reflowやSlow Flowになってしまった時に有用な使用方法ではあります。
しかし、注意しなければならないのがこの使用方法は適正な使用目的ではないということです。
あくまでも「冠動脈貫通用カテーテル」であり、ガイドワイヤーの通過を得るためのデバイスです。
なので、薬剤投与のみのために使用すると保険適応にならず、病院負担になることがあります。
この点は注意が必要です。
マイクロを用いた薬剤投与に関しては前回のマイクロカテをまとめた時に注意事項も書いているのでよろしければ参照ください。
マイクロカテーテルとは(基本編)
https://cekyoblo.com/?p=2181#i-4
・Tornus:トルナス
トルナスとは反時計回転に回転させることで高い通過性能を発揮します。
病変部に対してトルナスを押し当てながら回転させることでカテーテルが食い込み、固定することができる
固定されることで強いバックアップにもなり、病変内でのワイヤー操作がしやすくなります。
Tornusには2種類あります。
「Tornus PRO」2.1Fr
「Tornus 88Flex」2.6Fr
一言で言うなら太さが異なっています。
ドクターによっては「88のトルナス」などと言います。
朝日インテック社 ”Tornus”商品ページ
https://medical.asahi-intecc.com/products-coronary/tornus.html
使用方法
トルナスは病変部に対して反時計回転に回しながら病変内を進めるマイクロカテです。
病変内に食い込むことでバックアップを得ることができ、ワイヤー操作がしやすくなります。
病変内に入った後、抜く時には時計回転に回しながら抜きます。
メモ
進める時は「反時計回転」
抜く時は「時計回転」
注意事項
Tornusは反時計回転に回していい回数が決まっています。
・”Tornus PRO”は40回
・”Tornus 88Flex"は20回
と決まっています。
この回数以上回すと冠動脈内で破損する可能性があるので注意です。
上限が決められていますが、高度石灰化の時には先端がトラップされて上限まで回す前に破損する事もあります。
手元がおかしいと思った時には一度引き抜くことが大切です。
安全機構も備えており、破損する時にはカテーテル先端よりも先にシャフト部分が破損する設計にはなっていますが、完全ではないので破損する前に引き抜くようにします。
ポイント
回転可能上限数
・Tornus PRO:40回
・Tornus 88Flex:20回
異常時には無理せず引き抜く
どちらを使うか
2種類あるので血管、狭窄に合わせて選ぶのは当然ではありますが、その選び方は?
となるので、簡単に選ぶ際のポイントをまとめます。
ポイント
Tornus 88Flex
・より強い貫通力を必要な場合
・血管走行が真っすぐな場合方が安全
Tornus PRO
・蛇行血管にも対応可能
・細い末梢血管にも対応
トルナスの構造
トルナスは複数のステンレスのワイヤーがらせん上に絡み合って構成されています。
なので反時計回転させながら進めるデバイスです。
Tornus PROは0.10mmのワイヤー10本で構成されています。
Tornus 88Flexは0.18mmのワイヤー8本で構成されています。
ちなみに、一般的な髪の毛の太さは0.08mm~0.10mmのようです。