冠動脈の走行に注目した上で適切なガイディングカテーテルを選択する必要がPCIには必要です。
冠動脈の起始形態や病変の状態に合わせたカテーテル選びができるとgoodです!!
使用されるカテーテルの種類
ガイディングカテーテルはアプローチ部位やAortaの径や走行、冠動脈の起始部の位置や走行など様々な要因で選ぶものが変わります。
さらに、バックアップが必要な症例、治療戦略によって径の選択なども変わるので医師のストラテジー(治療戦略)が重要になります。
ガイディングカテーテルにはST(ショートチップ)やSH(サイドホール)といったオプション的な形状もあります。STは深く入りすぎてしまう時に良く、SHはカテーテルがウェッジしてしまう時や先端が血管壁に当たってしまうような時に良いです。
SHはカテーテルの先端から数cm手前に孔(穴)があり、そこからカテーテル先端へ血液が流れ、血流を維持することができます。
ポイント
・血管の走行や形状でカテーテル選びが変わる
・血管への愛護目的でSTやSH付きを選択する
右冠動脈
・最も使用される種類は「JR」です。
・カテーテルの支持性、バックアップが不足している様子でしたら「AL」が次に使用されるケースが多いです。
しかし、ALは右冠動脈に深く入りやすいため、血管損傷のリスクに注意する必要がある。
そのため、先端が少し短くなっているST(ショートチップ)を使用することで深くに入ることを予防できる。
・「JL」も右冠動脈に使用でき、エンゲージできれば強力なバックアップを得ることができます。
・「IR」、「IL」は橈骨アプローチで使用することを目的に開発されたもの。
表記 | 製品名 | 読み方:例(医師によりけり) |
JR | ジャドキンス ライト | ジェイアール |
AL | アンプラッツ レフト | アンプラッツ、エーエル |
JL | ジャドキンス レフト | ジェイエル |
IR | イカリ ライト | イカリの右 |
IL | イカリ レフト | イカリの左 |
ポイント
JR
エンゲージしやすいがバックアップが弱め
AL
バックアップがあり、上向きや高位置のRCAに良いが深く入りすぎることがある
JL
バックアップが強いがエンゲージがやや困難
IR IL
橈骨アプローチに良いとされ、バックアップが良好
左冠動脈
主に左の冠動脈で使用されるガイディングカテーテルはJL、BL、AL、ILなどがあります。
・JLタイプのガイディングカテーテルはLCAへのエンゲージが容易で深さ調整もできる。また、左主幹部や近位の前下行枝の病変に対して同軸性を保ちやすいといったメリットがある。
しかし、強いバックアップを取ることができないといったデメリットがある。
・BL(バックアップタイプ)はメーカーによって名称が異なり、VL、CLS、EBU、SS、SPBといったものがあります。
BLはJLに比べるとややエンゲージが困難となるが、名称のごとくバックパックが強いカテーテルとなる。
メーカー | 名称 | 表記 |
TERUMO | Back Up Left | BL |
Medtronic | Extra Back Up | EBU |
Boston | Voda Left, CLS | VL, CLS |
NIPRO | Special Support | SS |
朝日インテック | Super Power Backup | SPB |
・ALタイプはより強いバックアップを得ることができたり、比較的に回旋枝の方へカテーテルの先端を向けることができるといったメリットがある。また、左右ALのカテーテル一本で造影を済ませるができる可能性がある。
デメリットとしてはエンゲージが困難であることがあげられる。
・ILタイプでは右橈骨動脈からのアプローチであれば強いバックアップを得ることができ、深さ調整も可能なカテーテルである。また、ILは右冠動脈にも挿入することができる。
ポイント
JL
エンゲージが容易で深さ調整も可能だが、バックパックが弱い
BL
バックパックが強いが、エンゲージがやや困難
AL
強いバックアップがあり、回旋枝の方向を向きやすいがエンゲージがやや困難
IL
右橈骨動脈からのアプローチではバックアップが強く、深さ調整も可能
ガイディングカテーテル形状
ガイディングカテーテルのエンゲージの手順
右冠動脈
JR
- 左前斜位(LAO)にする
右冠動脈の起始部が見やすい - 左冠動脈の方向へカテ先を向けて右バルサルバ洞に入れる
- カテーテルを時計周りに右冠動脈の方へ回しながらゆっくり引き上げる
- 3を繰り返しながら右冠動脈にエンゲージする
※上行大動脈から落としながら入れようとするのは入れにくいとされている
AL
- 左前斜位(LAO)にする
右冠動脈の起始部が見やすい - 左冠動脈の方向へカテ先を向けて右バルサルバ洞に入れる
- カテーテルを時計周りに右冠動脈の方へ回しながらゆっくり引き上げる
- 上下に動かす事で操作性が上がり、挿入しやすくなる
- カテーテル先端が上向きにならないように操作する
※深く挿入されて血管を傷つけないように注意する
JL、IL
- 0.035inchワイヤーを用いてカテーテルを引き伸ばす
- JRに似た形にする
- その後はJRと同様にカテーテル操作を行う
左冠動脈
JL
- ガイドワイヤーを入れた状態で左バルサルバ洞へ進める
- 左冠動脈起始部方向へカテーテルを向けてワイヤーを引き抜く
- 主に反時計回り回しながら調整してエンゲージする
※JLは自然に挿入されやすい形状になっているのでカテーテルの長さ、前後に注目する
AL
バルサルバやAortaの拡張でJLでは届かない時などにALを使用する。
- ガイドワイヤー入れたまま、カテ先端を左のバルサルバまで進める
- ガイドワイヤーを抜くと左冠動脈の付近に位置する
- ALを進めるとカテ先端はより上を向く
- 造影で確認しながら押引き、回転を加えてエンゲージする
- エンゲージ状態でカテを引くと深く入り、押すと抜ける
同軸性にエンゲージする
メモ
同軸性:coaxial
カテーテル先端を血管の走行に対してできる限り水平に挿入することが大事。
より水平に挿入できている状態を同軸性があると言いいます。
カテーテル先端から造影剤やデバイスが進むので先端が血管壁に向いていたり当たっていたりすると血管を傷つけることがあるので注意が必要です。
血管壁に当たっている状態でカテーテルを動かすと、内壁をこすってしまうことがあるので解離を起こすこともあります。
また、同軸性がある方が治療デバイスの操作性が上がるので大事です。
ポイント
デバイスの操作性があがる
血管壁の損傷リスクが減る
まとめ
今回は主要なカテーテルの種類とカテーテル操作、同軸性についてでした。
カテーテルの形状、特徴の基本を把握していると手技が違って見れます。
カテーテル選択の提案や事前準備に繋がり、一皮むけた動きができるようになると思います。
医師の指示を待つだけでなく、次を予測した動きができるとカテに入るのも楽しくなるかもしれません。
ガイドワイヤーについて紐解こう
冠動脈バルーンこれだけは覚えて治療に挑もう!!