末梢血管インターベンションをEVT(EndoVascular Treatment)といいます。
末梢血管なので腕や頸部の血管治療も含めてEVTです。
みなさんの施設では足の血管内治療は多いですか??
今回はそもそもの件数が少なく、概要もわからない方が多いと思ったので下肢虚血についてまとめます。
目次
下肢の主な血管名
メモ
- 総腸骨動脈ーCIA(common iliac aorta)
- 内腸骨動脈ーIIA(internal iliac aorta)
- 外腸骨動脈ーEIA (external iliac aorta)
- 深大腿動脈ーDFA(deep femoral aorta)
- 総大腿動脈ーCFA(common femoral aorta)
- 浅大腿動脈ーSFA(superficial femoral aorta)
- 膝窩動脈 ーPopA(popliteal aorta)
- 前脛骨動脈ーATA(anterior aorta)
- 後脛骨動脈ーPTP(posterior aorta)
ざっくりと主要な血管をあげました。
しかし、施設によってはもっと末梢の血管治療をする事もあるので覚える血管が増えます。
足背動脈や足底動脈なども覚える必要があることがあります。
末梢動脈疾患(PAD)の概要
末梢動脈疾患PAD(Peripheral Arterial Disease)についてです。
PADは冠動脈、脳血管疾患以外の動脈硬化性疾患の総称ことを言います。
ですので鎖骨下動脈や腎動脈、頸動脈などで疾患があればPADとなります。
- 日本では50-80万人の患者数となっている
- 喫煙・糖尿病・高血圧・脂質異常症等がリスクファクター
この辺のリスクファクターは冠動脈疾患でも同様ですね。 - 透析患者は膝下病変を引き起こし、重症下肢虚血(CLI)となることがある
ちなみに、PADの治療は日本国内では8割が循環器内科が行っているようです。
症状の重症度分類
Fontaine分類
分類 |
臨床所見 | |
Ⅰ | 無症状 | |
Ⅱ | 間欠性跛行 | |
Ⅱa | 200m以上歩行可 | |
Ⅱb | 200m以下歩行可 | |
Ⅲ | 安静時疼痛 | |
Ⅳ | 潰瘍・壊死 |
Rutherford分類
重症度 | 分類 | 臨床所見 |
0 | 0 | 無症状 |
1 | 軽度跛行 | |
Ⅰ | 2 | 中等度跛行 |
3 | 高度跛行 | |
Ⅱ | 4 | 安静時疼痛 |
Ⅲ | 5 | 小さい組織欠損 |
6 | 大きな組織欠損 |
間欠性跛行には血管性跛行と神経性跛行の2種類があり、両方同時に起きていることもある。
以上の分類で重症下肢虚血疾患は
・Fontaine分類Ⅲ度以上のもの
・Rutherford分類Ⅱ(4)以上のもの
となっています。
その後の経過は1年以内に両下肢残存が45% 切断が30% 死亡が25%となっています。
CLIになると1年後に両足が残っている患者は半数以下になってしまいます。
診断検査
ABI(足関節上腕血圧比)検査
ABI:Ankle Brachial Pressure Index
両上肢と両下肢の4か所にマンシェットを巻いて血圧測定をする。
左右上肢血圧のどちらか高い値を分母にし、下肢の血圧を割った値が ABIとなる。
メモ
ABI=(足の最高血圧)÷(腕の最高血圧)
ABI値 | |
正常 | 0.9以上 |
軽度 | 0.71-0.9 |
中等度 | 0.41ー0.7 |
高度 | 0.0-0.4 |
一般的に足の方が腕よりも血圧は高くなる。
しかし、ABI値が高値(1.3以上)だと石灰化が疑われる。
安静時でも血管性跛行が疑われるなら運動負荷を加えてABIを行う。
ポイント
ABIカットオフは0.9mmhg
SPP(皮膚灌流圧)検査
SPPはレーザーセンサーを測定したい部位に固定し,その周辺をカフで加圧し皮膚微小循環をいったん途絶した後に徐々にカフ圧を下げ,皮膚微小循環が回復する圧を測定するもの。
SPPが40mmhg以上あればその周囲の傷や潰瘍は98%治癒すると言われているので治療の際はその値を目指す。
また、30mmhg以下だと重症下肢虚血と言え、治癒困難となる。
ポイント
治療によりSPPが40mmhgになるように目指す
PADの治療
PAD治療は
- 薬物療法 : シロスタゾール、スタチン
- 理学療法 : 監視下運動療法
- 血行再建 : EVT or 外科的OP
などが主に上げられます。
治療部位ごとの簡単な概要
Ao-iliac
- レトロ(逆行性)アプローチが容易でBi-directionを組める
- 治療後の開存性が良好
- 合併症リスクに注意
末梢塞栓や血管ラプチャー
Femo-pop
- レトロアプローチが容易でBi-directionを組める
- 治療後開存性がイマイチ
- 十分なデバイスの種類がある
- 治療予後のキープが大事
治療後の開存性が低下するので注意
BK
- CLIのみが治療適応となる
- レトロアプローチがやや困難のため成功率が低下
- 治療後開存性が悪い
- POBAのみでステントが使用不可
- 1年で80%程度の再狭窄率
- バイパスより成績が低い
血管内治療デバイスの簡単な概要
DCB:薬剤コーティングバルーン
- BMS(ベアメタルステント)と開存性が同じくらい
- <20cm病変に使用可能
- 強い石灰化には不向き
- 解離には適さない
ステントグラフト
- 治療後開存性は最もいい
- 長い病変でも使用可能
- 強い石灰化には不向き
- 血流の維持が大事
DES:薬剤溶出性ステント
- 短いステントならステントグラフトと同じ程度の治療後開存性
- 強い石灰化には不向き
- 血流の維持が大事
CLIならではの特徴
- レトロアプローチで様々なところから行える
膝、膝裏、指の付け根などの動脈にガイドワイヤーを挿入できれば治療が行える - CLIは血行再建のみの治療ではない
創傷管理、創傷治療、血行再建の3つが治療戦略となる - 創傷管理をする前に血行再建をすると菌が血流に乗って敗血症になることがある
創傷管理は安静、除圧、免荷が基本
まとめ
今回はEVTの下肢領域についてまとめました。
下肢の治療について何もわからない方向けに第一歩として記事にしたのである程度無駄は省いたつもりです。
そもそも深い話はできませんが。。。
でもまあ、下肢領域の血行再建には
「こんなものが関連しているよー」
というのが伝われば幸いです。
お疲れさまでした。
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