基本的な手技の流れは冠動脈カテーテル治療と同じです。
しかし、末梢動脈ということもあり、穿刺部位やアプローチ方法にレパートリーが増えます。
基本的ではありますが、「山越え」や「表パン」、「指パン」といったアプローチがあります。
それらを図などを用いてまとめようと思います。
目次
下肢血管 まとめ
主要な足の血管のまとめです。
治療していくうえで治療部位、穿刺部位で名が上がる血管をまとめました。
穿刺部位
穿刺部位は基本的に冠動脈治療時と同様です。
大腿動脈、上腕動脈、橈骨動脈などです。
遠位橈骨動脈は下肢まで遠すぎること、血管径が細いなどの理由から下肢治療で使われることはまずないです。
アプローチ部位:上腕動脈・橈骨動脈
上腕動脈、橈骨動脈に穿刺を行い、病変に対して順行性に治療を行うことができるアプローチとなります。
病変部まで距離が伸びてしまい、使用できるデバイスに限りが生じてしまうデメリットがあります。
バルーンやステント、IVUSなどが病変部まで届かないことが起きてしまうのでデバイス選択には注意です。
メリットとしてはデバイスの操作性が向上してプッシャビリティやバックアップに期待できるとされています。
上腕動脈と大腿動脈の両方向性アプローチのほうが大腿動脈同士の両方向性アプローチよりも治療成績が92%と74%で差があるという報告があります。
主に腸骨動脈の病変が適応となる。大腿動脈まで治療デバイスが届かないことがあるので注意です。
ポイント
メリット :デバイスの操作性が良い
デメリット:長さによるデバイス制限がある
アプローチ部位:大腿動脈
主に使用される穿刺部位でもある場所です。
大腿動脈のアプローチはされに分類できます。
メモ
- 同側順行性 下図②
- 同側逆行性 下図③
- 対側山越え 下図④
対側山越えはクロスオーバーともいいます。
同側順行性
浅大腿動脈SFAの治療に対してはガイドワイヤーの操作性が保たれることが治療成績の向上となるとされています。
腸骨動脈での山越えがなく、システムが直線的になることが操作性の保たれる大きな理由となります。
また、膝下動脈の治療の際には病変までの距離が短く、デバイスデリバリーのバックアップが向上します。
しかし、デメリットとしてシースを指す向きが末梢向きとなり、操作する向きが逆となってしまいます。
術者の立ち位置を変えるか、患者さんを反対側に向けて寝てもらうかをしなければいけません。
ポイント
メリット :デバイスバックアップがよく、デバイス操作性が良い
デメリット:シースの向きが尾側向きとなる
同側逆行性
同側の腸骨動脈の病変に対するアプローチです。
ガイディングシース先端に血流を遮断するバルーンが付属しているものを使用すれば血栓性病変の治療の際に遠位塞栓予防が容易に行えます。
(FlowGate Stryker社製、OPTIMO 東海メディカルプロダクツ社製など)
デメリットとしては穿刺部位によっては止血が困難となります。
土台となる骨が穿刺部垂直方向にあれば可能ですが、大腿部は筋肉や脂肪が多いため圧迫が十分にできないことがあります。
血管内にバルーンを留置して長時間拡張をする事でも止血は可能ですが、治療がFailした時にはできない止血方法なのでリスクを伴います。
大腿部で止血できない時には大量出血になり得るので慎重になる必要があります。
ポイント
メリット :バルーン付きカテーテルの使用で末梢塞栓予防が容易
デメリット:止血困難になり得る
対側山越え(クロスオーバー)
穿刺同側の対側の腸骨動脈や大腿動脈に病変がある場合、または総大腿動脈や浅大腿動起始部に病変がある時に行う方法です。
アプローチが病変に対して近いのでデバイスの制限が少ないメリットがあります。
しかし、腹部大動脈の分岐を鋭角に曲がらなければならず、バックアップが大きく減少してしまうデメリットがあります。
また、石灰化の高度な場合や腸骨動脈の分岐角度が小さい場合などでは分岐部を越えてガイディングシースを進めることが困難な場合もあります。
ポイント
メリット :デバイス制限が少ない
デメリット:デバイス操作性バックアップが減少する
逆行性アプローチで使われる穿刺
末梢血管カテーテルでは様々なところからの逆行性アプローチが可能です。
冠動脈での逆行性アプローチは側副血行路を使用しますが、心臓では病変の末梢側に穿刺は不可能なので側副血行路(コラテ)を使うしかありません。
しかし、EVTでは側副血行路が無くても逆行性アプローチは可能となります。
病変部位の末梢側から直接穿刺ができるため、シースやカテーテルを挿入することができるます。
ですので、EVTでは冠動脈よりも治療のレパートリーが増えます。
ちなみに、逆行性アプローチをレトロアプローチと言えるので「レトロ」と言います。
順行性アプローチをアンテアプローチと言うので「アンテ」と言います。
この逆行性アプローチをする場所はいくつかあります。
穿刺部位によって「表パン」や「裏パン」といった「○○パン」という表現となっています。
ここでの「パン」はパンクチャー(puncture)からきています。
ここではいくつかある「○○パン」がどこの穿刺かまとめます。
まず初めに穿刺するためにはエコーか透視を使用する
逆行性アプローチをするためには血管に穿刺しなければいけません。
しかし、脈が必ず触れるわけでもないので穿刺が難しいです。
ですので穿刺にはエコーか透視を用います。
ポイント
- エコーで血管を確認しながら穿刺する
- 血管造影をしてロードマップ、リファレンスをもとに穿刺する
100%狭窄が下肢に起きていても側副血行路があり、病変Distalが血管造影で描出されることが多いので透視下でも穿刺は可能です。
表パン
一般的に言われている表パンは遠位部浅大腿動脈に対して逆行性に刺す穿刺です。
腸骨動脈や近位浅大腿動脈での難しい症例ですることがあります。
横パン
横パンは多くは聞かない気がしますが、、、
横パンは膝下動脈または浅大腿動脈に対して側方から穿刺します。
膝窩動脈や浅大腿動脈などの治療で行うことがあります。
表膝パン
表膝パンは膝下動脈の前方に対して穿刺します。
前方から穿刺し、浅大腿動脈の治療で使用されることがあります。
裏パン
裏パンは膝裏の膝下動脈に対して穿刺します。
膝裏なので患者さんには腹臥位(うつ伏せ)になっていただく必要があります。
こちらも浅大腿動脈の治療で行うことがあります。
指パン
指パンは足の指の間から足背動脈を目掛けて穿刺します。
足背やくるぶしのあたりの血管治療で行うことがあります。
指パンは穿刺時に痛みを伴いやすく、患者さんが足を動かしてしまうことが多いので神経ブロックを用いてから穿刺するのがベターです。
底パン
底パンは足底動脈を目掛けて穿刺します。
底パンも指パンと同様に神経ブロックをするのが体動を少なくすることができます。
まとめ
下肢は冠動脈治療とは異なり、カテーテル操作が命に直結することは少ないです。
それため、治療レパートリーが増えます。
その一つに穿刺部位、アプローチ方法も多様になっています。
どんな方法があるかまとめておくと治療戦略(ストラテジー)の提案ができるかもしれませんね。
同時にメリット、デメリットもあるので把握しておきましょう!!