脳カテ

頸動脈ステント留置術(CAS)とは?(使用カテ編)

CASを行う内頚動脈狭窄症に関する病態については以前まとめました。

ぜひ、そちらを確認してください。
CASの適応や狭窄度の評価方法など、有症候性について等はまとめてあります。

頸動脈ステント留置術(CAS)とは?(病態編)



今回はCASで使う主なカテーテル物品

  • バルーン付きガイディングカテーテル
  • フィルター
  • PTAバルーン
  • ステント

これらについてまとめます。

・バルーン付きガイディングカテーテル

文字通り、ガイディングカテーテルにバルーンが付いているカテーテルです。

これも以前、血栓回収についてまとめた時に少しだけ触れています。

脳血管における急性期血行再建術 血栓回収

用途としましては、ガイディングカテーテルなのでワイヤーやインナーカテ、治療デバイスをデリバリーするための目的があります。

また、「バルーン付き」これが大きな特徴です。
適切な位置でバルーンを膨らませることで血流を遮断することができます。
これによって、プラークが崩れてしまっても血流に乗って末梢へ流れずに済みます。

要は末梢塞栓を予防することができます。
CASの場合では脳塞栓を予防することが目的です。


ポイント

血流を遮断することで脳塞栓を予防する

カテーテル先端にプラークや血栓があれば、シリンジなどで吸引することができる。
また、バルーンを収縮させる時は基本的に吸引を実施する。

バルーン付きガイディングカテーテルで血流を遮断していいのか

主に総頚動脈でバルーンを膨らませるので脳への血流が減ってしまいます。

そうすると当然ながら脳虚血になり、脳梗塞や麻痺が生じます。
そんなリスクがあるのに使用していいのか。という問題があります。

この問題に対してはウィリス動脈輪が解決してくれることがあります。
右の総頚動脈を塞栓しても、ウィリス動脈輪を介して左からの血流サポートがあることがあるからです。

なので、バルーンで塞栓しても問題にならないこともあります。


しかし、毎回問題が無いという事ではないので
脳への血流が維持されているか確認しながら手技をする必要があります。

ポイント

ウィリス動脈輪を介して対側から血流を得られる
必ず血流があるわけではないので脳血流のモニタリングは必要


この話についても以前の記事にまとめてあるのでよろしければ読んでみて下さい。

無症候性 CAS 頸動脈ステント留置

・フィルターやバルーンでプラークを捕捉する

フィルターで末梢保護

フィルターは網目状になっており、プラークよりも遠位部で留置することでプラークが血流に乗って流れてしまっても捕捉することが可能です。

また、網目状になっているので血流の維持ができると同時に造影して確認することも可能です。
バルーンでは造影剤が流れないので、フィルターのメリットと言えます。

デメリットとしてはフィルターの網目よりも小さいプラークなどは捕捉できません。
プラークが多すぎると網目が詰まってしまう事も考えられます。


ポイント

メリット
・血流の維持
デメリット
・プラークの取りこぼしが起こり得る



フィルターの種類
・Spider FX (Medtronic)
https://www.medtronic.com/jp-ja/healthcare-professionals/products/cardiovascular/embolic-protection-devices.html
・Filter Wire FX (Boston)
https://www.bostonscientific.com/jp-JP/products/stent/CarotidSolutions.html

バルーンで末梢保護

バルーン付きガイディングカテーテルはプラークの手前(proximal)でバルーンを拡張することで末梢保護を行います。
ここではプラークよりも遠位(distal)で拡張することで末梢保護するものをまとめます。

バルーンをプラークよりもdistalで拡張することで血流を遮断することができます。
血流がなくなるのでプラークが末梢へ流れることがほぼ無くなるので保護することができます。
しっかり遮断するので小さいものもキャッチすることができます。

デメリットとしてはバルーン付きガイディングカテーテルと同様に脳血流を完全に遮断してしまう事です。

ポイント

メリット
・プラークを取りこぼさず、キャッチできる
デメリット
・脳血流を遮断してしまう



バルーンの種類
・GuardWire (Medtronic) ・MOMA ultra(Medtronic)
https://www.medtronic.com/jp-ja/healthcare-professionals/products/cardiovascular/embolic-protection-devices.html

GuardWireはワイヤーでありながら圧を掛けることでバルーンになる優れものです。
しかし、高価であったり、手技が容易ではなかったりといった理由から使用頻度は落ちているそうです。

MOMA ultraに関しては以前まとめていますので参照ください。
MOMAの仕組みは大丈夫??

・PTAバルーン

PTAとは "Percutaneous Transluminal Angioplasty" 日本語で「経皮的血管形成術」といいます。

その手技に用いるバルーンなので「PTAバルーン」といいます。

脂質性プラークや、石灰化プラークなどによって狭くなった血管を広げるために用います。
また、ステントを留置した後に血管内壁にしっかり押し付けるためにも用いられます。

PTAで使用するバルーンの例
・スターリング(sterling:Boston)
・マスタング(Mustang:Boston)
・ジェニティー(Genity:KANEKA)
・Bellona:メディコスヒラタ

メモ

PTAバルーンの目的
・狭窄部の血管拡張をして血管の形成
・ステント留置後の圧着目的

・ステント

PTAによって広げた血管にステント留置することで再狭窄の再発を軽減することが期待できます。

そのため、ステントを留置します。

主に使用されるステントは
・キャスパー(CASPER:TERUMO
・プロテージ(PROTEGE:Medtronic
・ウォールステント(WALL STENT:Bellona

ポイント

PTAを行って拡張した血管を維持するためにステント留置を行う

テーパードステント

頸動脈ステント留置ではテーパードステントというものを使うことがあります。

「taper:先が細くなる」という意味で、ここではステントの端の径が異なる物を言います。

基本的には血管は末梢の方が当然の事として細くなります。
総頚動脈よりも内頚動脈の方が細くなります。
なのでテーパーされているステントを用いて狭窄の解除を行うことがあります。


ストレートタイプのステント(CASPER:TERUMO)
TERUMO 製品サイトより引用
https://www.terumo.co.jp/medical/equipment/me416.html

テーパードタイプのステント(Protege:Medtronic)
Medtronic 製品サイトより引用
https://www.medtronic.com/jp-ja/healthcare-professionals/products/cardiovascular/peripheral-stents/protege-rx-se.html

Stent design

・治療中に起こり得る合併症「徐脈」

治療中に起こり得る合併症として徐脈があります。

迷走神経反射の亢進(ワゴトニー反射)頸動脈洞反射の2つです。

ワゴトニーはCAS以外でも起こり得る症状です。
「ワゴった」などと医師がいう事があります。

ときに、高度の徐脈となってしまい、脳幹への血流が減少したことで失神を来すことがあるので注意が必要です。

ここからもう少し掘り下げてまとめます。

迷走神経反射(ワゴトニー反射)

  • 痛みや不安、恐怖、緊張などが原因
  • こういったものを我慢することで交感神経が有意に働くが、原因が取り除かれた時(治療後など)に、バランスを取ろうとした副交感神経が有意になってしまい、迷走神経反射が起こる
  • 徐脈や低血圧、冷汗やあくび、吐気や嘔気が出たらワゴトニー反射を疑う

頸動脈洞反射

  • 頸動脈内をワイヤー操作しているときやバルーンやステント拡張しているときに頸動脈洞を刺激、圧迫が原因
  • 洞房結節や房室結節からの信号を抑制してしまい、徐脈や血圧低下を招く
  • 結果的に脳幹への血流低下、酸素量減少で失神を起こしえる

対処、予防

迷走神経反射や頸動脈洞反射が起きそうなシチュエーションでは患者観察をしっかり行う

ポイント

  • バイタルチェック
    心電図、HR、血圧、脳局所酸素飽和度
  • 患者への声掛け
    不安を取り除くを含む
  • アトロピン硫酸塩の投与


アトロピンの投与は徐脈の予防として血管拡張する前から、ステント留置を行う前から行う事もあります。

・脳局所酸素飽和度 rSO2

rSO2は言うならば指で図るSpO2のおでこ、前額面タイプみたいなものです。

おでこで酸素飽和度を計測することで酸素量を推定できる。計測できるという事は脳への血流があることが予測できる。
と言った指標となります。

また、血管拡張後に「rSO2」の値が大幅に増大した場合は脳への血流が過灌流の場合があると言えます。
過灌流になると脳出血のリスクがあがるので重要なモニタリングと言えます。

装置、機械としては
・IVOS (Medtronic社製
・NIRO (浜松ホトニクス社製
・ROOT (MASIMO社製

こういった機器で測定が可能です。
※ちなみに、体外循環やCPA蘇生の際などでも活躍することがあります。

ポイント

脳血流の有無を確認できる
狭窄解除後の過灌流を確認できる


当然のことではありますが、

  • バルーンで狭窄部の拡張中
  • 末梢保護のためにバルーン付きガイディングカテーテルのバルーンを拡張しているとき
  • 末梢保護のためにMOMAのバルーンを拡張しているとき

などではrSO2の値は低下します。

札幌西孝仁会クリニック 脳神経外科 (著)

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