頸動脈ステント留置術(CAS:Carotid artery stenting)とは
「内頚動脈に対してステントを留置する経皮的血管内治療」です。
内頚動脈にプラークが溜まってしまい、
脳への血流が低下閉まっているときに行うカテーテル治療です。
脳への血流が低下することで様々な神経症状が出ることがあり、狭窄の解除は推奨されます。
使用するデバイスも含めてどんな手技か共有していこうと思いますが、
今回は前編として「病態について」簡単にまとめます。
ちなみに、一般的にはCASよりも外科的治療のCEA(頚動脈内膜剥離術)の方が推奨度が高い現状です。
・目的
内頚動脈は脳への血流をになっているので、狭窄によって血流が低下していると神経症状を起こすことがあります。
ですので、頸動脈ステント留置術は狭窄、閉塞してしまった内頚動脈の拡張のために行います。
また、狭窄の原因となっているプラークが崩れると血流に乗って脳梗塞の原因ともなってしまいます。
ポイント
・脳血流の確保
・プラークを押さえつける
・血管径を確保する
こういった目的があります。
外頸動脈は顔面への血管なので、そこまで慎重になりません。
・適応
ポイント
・18歳以上
・50%以上の狭窄かつ症状有り
・80%以上の狭窄の場合は無症状でも適応
・CEAはHigh riskの患者
こういった患者ではCASが適応となります。
CEAのHigh riskは
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・うっ血性心不全
・CAD(虚血性心疾患)※ただし、制御できないもの
・頸部(首回り)の手術実施済み
などがあげられます。
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドラインp25-26 より
・CAS除外基準
・48時間以内の脳虚血発作
・血管内血栓の存在
・完全閉塞病変
・病変長が長くステント2本必要な場合
・全周性石灰化病変
・脂質性プラークが多い場合
・カテーテル治療が不向きな血管走行、形態
・頭蓋内に9mm以上の動脈瘤
などがあげられます。
・狭窄度評価方法
頸動脈エコー
狭窄度や血流速度の計測が可能です。
プラーク性状もエコーの輝度からも判断でき、非侵襲性なのでとても有用です。
また、可動性プラークの場合でも動きを観察できるので有用。
MRI
プラークをMRIで観察することでプラーク内出血や脂質の評価が可能です。
頸部CT
血管壁の石灰化を評価できます。
石灰化は白く描出されます。
造影剤も併用した場合は血管内腔と石灰化の位置関係もわかります。
頸部CTで全周性の石灰化が確認されたらCASは適応外を考慮します。
数値的評価 ”NASCET法”
エコーや造影CTなどから得られた画像から狭窄率を数値で算出します。
一般的には造影CTで得られたもので算出する。
NASCET法で50~70%であれば内頸動脈有意狭窄とする。
文献によって値が異なるので明確なものはない。
ポイント
CAS適応
・症候性 :NASCET >50%
・無症候性:NASCET >80%
狭窄率の算出にはECST法もあるが主として使用されるのはNASCET法となっている。
※狭窄率はECST法の方がやや大きく出る
最近ではスタチンなどの薬によって、メディカルで治療する戦略もあるので
狭窄率による治療は今後も議論の余地がある。
・無症候の理由の一つ
内頸動脈に有意な狭窄があっても脳への血流があることはあります。
例えば、
左の内頸動脈が狭窄した場合、左の中大脳動脈や前大脳動脈の血流は落ちます。
しかし、脳血管はWillis(ウィリス)動脈輪があるため、右から血流を得ることがあります。
前交通動脈や後交通動脈を介して対側へ血流を確保できるのです。
なので有意狭窄でも無症候性の患者さんもいらっしゃると考えられます。
もちろん、両側の内頸動脈狭窄ではそうはいかないことも多いので要確認です。
・まとめ
今回はCASにおける病態編として内頸動脈狭窄症についてまとめました。
適応から除外、治療する理由や狭窄度の評価方法についてでした。
治療中にはそこまで気にすることは少ないかもしれませんが、病態を知ることで治療中の注意すべきことも見えてきます。
次回、脳カテ分野をまとめる時にはデバイス編として使用するカテーテル類をまとめる予定です。
お疲れ様でした。
頸動脈ステント留置術(CAS)とは?(使用カテ編)
最低限覚えたい脳血管【脳血管の解剖】 Part.1