脳の血管は詰まると脳梗塞となります。
症状として、歩けなったり意識レベル低下、痺れなどがあります。
他にも、急な失語で喋ることができなくなる事があります。
脳の血管が詰まることで起きる脳梗塞は「不可逆性」です。
(簡単に言うと元に戻らず、治らないこと)
ですので、できる限り早い再開通を目指す必要があります。
医師は早い治療の導入、再開通を目指すので治療の概略を知ることは重要です。
外回りコメディカルとして治療の流れを把握していきましょう!
目次
バルーン付きガイディングカテーテルの挿入
シースを挿入し、ガイドワイヤー、インナーカテーテル、バルーン付きガイディングカテーテルを挿入します。
バルーン付きガイディングカテーテルは血流を遮断するための重要なカテーテルです。
主に内頸動脈(ICA)まで進めます。
ポイント
バルーン付きガイディングカテーテルは血流を遮断するためのカテーテル
バルーン付きガイディングカテーテル留置までの手順
こちらを参照ください。
血栓回収の時はガイディングシースではなくバルーン付きガイディングカテーテルを進めます。
使用するワイヤー、カテーテルなど
使用するシースは9Frか8Frの25cmのもの
メモ
当院で使用するシースは
・9Fr25cm
・8Fr25cm
どちらかを使用するバルーン付きガイディングカテーテルのサイズに合わせて選択している
使用するワイヤーは主に0.035inchのガイドワイヤー
メモ
当院で使うワイヤー種類としては
・ラジオフォーカス (TERUMO)
・Silver way (ASAHI インテック)
血管の性状、走行によってハーフスティッフやスティッフといった硬いワイヤーを使用する事もある
使用するカテーテル(インナーカテーテル)
メモ
当院で使うインナーカテーテルの種類としては
・CXカテーテル
・JB2カテーテル
・SIMカテーテル
など
また、使用するバルーン付きガイディングカテーテルによって異なるが、
インナーカテーテルは主に4~6Frの太さのものを使う
使用するバルーン付きガイディングカテーテル
メモ
当院で使うバルーン付きガイディングカテーテルの種類としては
・OPTIMO (東海メディカルプロダクツ)
・Flow Gate (Stryker)
基本的にはこの2種類のどちらか
8Frか9Frのものを使用している
バルーン付きガイディングカテーテルからの造影で確認
バルーン付きガイディングカテーテルから造影を行って、閉塞部位を確認する
下の造影では内頸動脈(ICA)までしか造影されていない
前大脳動脈(ACA)、中大脳動脈(MCA)が造影できていない
((造影の途中の切り抜きではありません)
吸引カテーテルで血栓を吸引 ADAPT
マイクロガイドワイヤーと吸引カテーテルを閉塞部位(血栓部位)まで進め、吸引を行う
吸引による血栓を除去する方法をADAPTという
(a direct aspiration first-pass technique : ADAPT)←fはどこ行ったんでしょうかね...
使用するマイクロガイドワイヤー
メモ
当院で使用するワイヤーは
・ASAHI CHIKAI 14 Black soft tip
最近はSynchro2 (Stryker)も使います
”ASAHI CHIKAI 14 Black”にはノーマルのものと”soft tip"の2種類あるので注意
ノーマルのものは比べるとやや硬いです
そして、Blackには0.018inchのものもあるので間違えないように。
使用する吸引カテーテル
メモ
当院で使用する吸引カテーテルは
・5MAX ACE (Penumbra)
・AXS Catalyst (Stryker)
・REACT (Medtronic)
この使用する吸引カテーテルによって使用する自動吸引装置が異なります
吸引手技の実際
吸引方法には2つの方法があります
・手動で行う方法:シリンジを接続して陰圧をかける
・自動で行う方法:自動吸引装置を使って持続的に引く方法
どちらも吸引カテーテルを血栓に圧着させる必要があります
でないと血管壁を損傷してしまうことがあります
血栓があると血流を遮断し、酸素欠乏となり、麻痺となるので早急の再開通が必要です。
血栓の確認ができたら、病変部位まで吸引カテーテルを進めます
吸引カテーテルを
・マイクロガイドワイヤー(CHIKAI Black soft tip)
・マイクロカテーテル(MarksmanやTtak 21など)
を用いて血栓に圧着させます
圧着させた後、吸引を行って血栓を取り除きます。
この時の吸引の方法が手動と自動で行う2通りとなります。
ポイント
血栓周りでカテーテル操作を行う時には
バルーン付きガイディングカテーテルのバルーンを拡張させて手技を行います
血栓が崩れてしまった時に、血流があると動脈の末梢を塞栓してしまう恐れがあるためです
ステントを用いた血栓回収 SR
吸引手技だけでは血栓を回収しきれないことがあります
そういった時に行うのがステントを用いた血栓回収です
ステントに血栓を絡ませることで、血栓を把持し、回収する
といった手技があります
メモ
ステントを用いた血栓回収を”Stent Retriever : SR"と言います
使用するステント
メモ
当院で使用するステント
・Trevo NKT (Stryker)
・Tron FXⅡ (TERUMO)
・Solitaire Platinum (Medtronic) など
ポイント
対象となる血栓が脳動脈のどこにあるかによって、ステントのサイズが変わります
ステント手技の実際
ステントを用いた血栓回収は手技が多くなります。
・マイクロガイドワイヤーを血栓よりも末梢へ通すこと
・マイクロカテーテルも血栓よりも末梢へ通すこと
・ステントを展開すること
・吸引をしながらステントを回収しつつ血栓を絡み取ること
といったことをしなければなりません。
手技が煩雑になるものの、より血栓を回収できる可能性が上がるメリットがあります。
ここからは流れをまとめます。
1.ワイヤー、マイクロカテを血栓よりも末梢に進める
2.ワイヤーを抜き、マイクロカテが真腔にあるか確認造影を行う
3.ステントで血栓を絡めとる
3.1 マイクロカテーテル内をステントが血栓を越えるまで進める
3.2 マイクロカテーテルを吸引カテーテルまで引き抜く
3.3 ステントは自己拡張型なのでマイクロカテーテルから出てくると広がり、血栓に絡まる
※見えにくいですが、血栓の手前には吸引カテーテルが留置されています
4.吸引を行いながらステントを引き抜く
ステントをマイクロカテーテル内に収納しながら引き抜く
うまくいけば綺麗に再開通となります
メモ
SRとADAPTを併用したこの手技をcombained techniqueといいます。
D2P time, P2R timeとは
脳が血栓などによって血流が遮断されると脳梗塞となり、麻痺が生じてしまいます。
脳梗塞は不可逆性なので一刻も早く、一秒でも早くその血流の遮断解除が重要です。
医療者としては患者さんが病院に運ばれてから血流再開までの時間を短縮することに力を注ぎます。
病院に来るまでは早い救急要請、救急隊の対応にお願いするしかないですが、
病院に来てからは医療者によって時間短縮ができます。
その時間短縮において、ある時点からある時点の時間のことをD2PやP2Rと言います。
D2P time は「Door to Puncture」
P2R time は「Puncture to Recanalization」
「来院から穿刺までの時間」と「穿刺から再開通までの時間」を意味します。
これらの時間を短くすることが患者さんの予後にいい影響をもたらすとされており、
ドクター含め、看護師や放射線技師その他コメディカルは時間短縮を目指します。
ポイント
D2P time 「来院から穿刺までの時間」
P2R time は「穿刺から再開通までの時間」
まとめ
急性期血行再建術 脳血栓回収は時間との勝負です。
D2P, P2Rを短くすることで患者さんの予後が良くなり得ます。
ですので、煩雑ではありますが脳血栓回収の手技を理解して治療に参加し、少しでも患者さんのために治療に臨みましょう!!
ちなみにこちらのyoutube動画が一連の手技を載せているので流れが掴みやすいかもしれません。
年齢制限があるようなので当ブログ内での再生できません。
チャンネル:けいはら ~脳血管治療~
タイトル:SOFIA FLOW吸引カテによる脳血栓回収
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