メモ
OCT(Optical Coherence Tomography)とは日本語で光干渉断層撮影法といい、
近赤外線を用いた血管内イメージングデバイス
IVUSは超音波を用いるのに対してOCTは近赤外線を使用しています。
同じ近赤外線を用いたイメージングデバイスにはOFDIがあります。
OCTは”Abbott”というメーカの製品に対して、OFDIは”TERUMO”というメーカの製品です。
操作性の違いはある物の、使用用途や性能自体には大きな差はないと思います。
今回は実際のイメージング画像を用いて、それぞれの病変がどのように見えるのかまとめます。
目次
・正常血管
血管壁に異常が無ければ内膜、中膜、外膜の3層構造が観察できます。
ポイント
・内膜:やや輝度が高く、薄い膜が見える
・中膜:内膜よりは輝度が低い膜として見える
・外膜:内膜と輝度が同等の膜が見える
画像がやや粗く、見にくくなっており、すみません。
供覧させていただいている画像では心膜腔も見えています。
・線維性プラーク
線維性プラークの特徴
ポイント
・輝度は高い
・中膜、外膜は見えることが多い
・膜との境界は不明瞭
・プラークは均質でムラが少ない
セミコンバルーンで十分な前拡張ができることが多いですが、時に硬めな線維性プラークな場合があり、NCバルーンが必要なケースもあります。
・脂質性プラーク
脂質性プラークの特徴
ポイント
・輝度は減衰するほど低い
・膜との境界は不明瞭
・減衰が多く脂質部の深いところは見えない
・プラークは均質でムラが少ない
バルーンで容易に拡張することができるが、プラークの破綻には注意する。
プラークが破綻してこぼれて末梢に流れると、末梢塞栓を起こすことがあります。
また、プラークが破れてそこから出血して血栓形成の原因にもなり得ます。
・石灰化
石灰化の特徴
ポイント
・輝度は低い
・境界は明瞭になる
・減衰は少なく、石灰化の厚さまで確認できる
・不均質に描出される
バルーンで拡張、亀裂(crack)を入れることが困難なことが多い。そのため、カッティングバルーン類やロータやOASといったデバルキングシステム使用の必要があることがあります。
石灰化に対してはOCT/OFDIは良い適応と考える事が多いです。
石灰化の厚みが分かるのでロータやOASでどのくらい削るか、どのくらい削れたのかなどの評価が可能になるからです。
バルーンにおいても、どのくらいの厚さ、何度で石灰化が割れるかといったデータも出ているので有用となり得ます。
※0.67mm以下の厚さ、227°以上で割れやすいそうです。
・TCFA(thin-cap fibroatheroma)
TCFA(ティクファ)は明確な訳はないものの、「破綻しやすいプラーク」という認識です。
脂質性プラークの表面に薄い膜が覆っている状況で、その膜が破けると血栓症になりやすくなります。
膜が薄いため、ACSのリスクや治療時にプラークラプチャーによる末梢塞栓を合併することがあります。
※血管長軸方向で5mm以上TCFAがある場合は末梢塞栓のリスクが高い
TCFAがあった場合には注意が必要なので、OCT ODFIで観察されたら末梢塞栓の可能性を持って対応します。
TCFAの特徴
ポイント
・65μm未満の薄い線維性プラークの存在
・線維性プラークよりも深部が減衰し、輝度が低い
・血栓
血栓の特徴
ポイント
・輝度は低い
・減衰が大きい(赤色血栓)
・減衰が小さい(白色血栓)
・血管内腔へ突出していることが多い
・ACS症例でよく見かける
・均質でムラが少ない
血栓はACS(急性冠症候群)でよく見かけ、プラークの破綻による出血が原因となっていることが多いです。
内腔へ突出することから血管閉塞のリスクでもあり、血栓吸引や末梢保護デバイスなどを使用します。
下の左図はACS症例で、プラークラプチャーが起きた疑いがある所です。
ここからの出血コントロールができなければステント留置を検討し、コントロール可能であればステントレスで終えてメディカル(薬剤調整)でコントロールします。
・石灰化結節(Calcified nodule)
石灰化結節の特徴
ポイント
・血管内腔に突出
・輝度は低い
・減衰が大きい(石灰化と異なる)
CAGで石灰化結節部位は造影剤が抜けた描出になることが多い。下左図
OCT/OFDIでは血栓との見極めが難しいことがある。そのため、CT画像やIVUSなども用いて評価すると明確に判断できる。
IVUSにおいて石灰化結節では後方が減衰し、血栓では減衰しない。CTでは病変部位が石灰化結節では高輝度になる。
治療としては主にデバルキングシステムを使用することが多い。
・プロトリュージョン(Protrusion)
プロトリュージョンとは主にステント留置後に見られる現象で、ステントの網目からプラークが染み出ている状態の事です。
多くは脂質性プラークにステント留置した場合に見られます。
このプラークが末梢に流れ、末梢塞栓を起こす原因となることがあります。
・解離(disection)
解離の特徴
ポイント
・膜の連続性途絶
・偽腔の存在
解離の程度にもよりますが多くは処置が必要です。
解離腔が広がってしまうと血管を圧迫し、血管閉塞になってしまいます。
冠動脈の入口部で起きると上行大動脈に及ぶことがあり、大血管置換術をする事にもなりかねません。
見落としは厳禁と思って確認してください。
カテーテルで可能な対応としては
メモ
・エントリー部に対してしっかりとステンレスを圧着させて留置
・ステントグラフトを使用して偽腔への流入を防ぐ
・オクリュージョンバルーン(RYUSEI)で長時間圧迫
・新生内膜
新生内膜とはステント留置後に派生するステントを覆う膜の事です。
主に、平滑筋細胞で覆われ、ステントという異物に対する免疫作用です。
OCTではステントの内側に、均質性の層が見えるようになります。
ここからは余談ですが、、、
ある程度、新生内膜でステントが覆われていれば血栓の形成も抑えられます。
しかし、新生内膜が発達し過ぎると血管内腔が狭小化するデメリットがあります。
それを抑える目的で使われているのがDESやDCBです。
・ステントマルアポジション(stent malapposition)
ステントマルアポジションとはステントが血管壁に十分圧着していない状態を言います。
この状態で手技を終えるとステント内再狭窄のリスクや血栓症のリスクになるので注意が必要です。
基礎的な事にはなりますが、上図右のような場合では青〇のところは圧着不良のようにも見えます。
※左のOCTの図のシェーマではありません。
しかし、血管側枝の合流するところなので問題にはなりません。
・関連リンク
Abbott:OCT https://www.cardiovascular.abbott/jp/ja/hcp/products/coronary/oct/overview.html
最近では「UltreonTM 1.0 ソフトウェア」を発売しており、AIを搭載したOCTがあります。
一長一短はありますが、こちらは石灰化の解析に重きをおいたものになっています。
IVUSでの見え方は大きく異なります。
今度、IVUSとの性能や見え方の違いについてまとめようかと思います。
IVUSの見え方