心臓カテーテル検査では右心系をメインとした検査があるのはご存知かと思います。
スワンガンツカテーテル(Swan-Ganzカテーテル)を用いて心内圧の値を計測するのが主な検査内容です。
そういった各心腔内圧の正常値などは調べればすぐに出てきますよね。。。
なので今回はもう少し深堀した内容をまとめようと思います。
・心房圧の陽性波と陰性波
右心房や左心房は
- a波:陽性波
- c波:陽性波
- v波:陽性波
- x波:陰性波
- y波:陰性波
から構成されています。
これらがどういったものかというのを理解するのも大事です!!
医師全員が理解しているわけではないのでぜひ覚えて鼻高になってしまいましょう!!
a波
a波は心房が収縮することでできる陽性波です。
心電図上ではP波よりも約80msec遅れた辺りにa波のピークが来ます。
心房細動(Af)や心房粗動(AFL)ではa波は消失してしまいます。
細動や粗動では十分な拍出を心室へ送れないため圧が立ち上がないためです。
また、正常な右心房では圧の値は 「 a波 > v波 」 となります。
c波
c波は房室弁の閉鎖時に生じる陽性波です。
右心房でのc波は三尖弁、左心房でのc波は僧帽弁の閉鎖時です。
反射波とも言われます。
この反射波は心室の収縮によって房室弁が閉まることで心房に圧がかかること意味しています。
a波からv波の間にノッチのような波としてみられることがあるものの、c波は圧波形で見られない事も少なくなく、臨床的意義も少ないとされている。
v波
v波は心房の拡張期の陽性波です。
心房の拡張期における受動的な静脈の充満によるものです。
心室の収縮による圧上昇と間違えられがちですがあくまでも充満による圧上昇です。
左心房では右心房と異なり圧の値は 「 a波 < v波 」となります。
x波(x谷)
x波は心房弛緩期であり、房室弁が閉鎖して心房へ血液が流入している期間です。
心房細動や心房粗動では心房からの拍出が減るので、心房への流入できる血液量が減るのでx谷も浅くなります。
y波(y谷)
房室弁が開き、心室の受動的充満が起こる圧の低下を示しています。
なので言い方を変えると、心房の収縮までの期間とも言えます。
ポイント
- a波は心房の収縮圧
- c波は房室弁閉鎖時の反射波
- v波は心房拡張期の静脈充満圧
- x波は心房弛緩期
- y波は心室充満期
・”a波 > v波” , ”a波 < v波” の理由
上記したように一般的に右心房では「a波 > v波」となり、
左心房では「a波 < v波」となります。
もし興味があるようなマニアック方は確認してください。
なぜ右心房ではa波がv波より大きいのか、なぜ左心房ではa波がv波より小さいのか・・・
私は疑問に持ちましたが説明をしてくれる人、文献がなかなか見つからなかったので苦労しました。
なので得た知識をまとめます!
右心房は比較的薄いこともありますが容積も大きく、圧を上げなくても血液を充満することができるのです。
なので充満期の値となるv波が右心房では大きくなりにくいのでa波 >v波となるのです。
左心房は右心房よりも厚く、硬いことからコンプライアンスが低くなっています。
また、比較的硬い肺静脈によって逆流するv波を減衰させることができませんが、右心房では大静脈がv波を容易に減衰させることができるので左右のv波の大きさに差ができやすくなっていることも要因となっているようです。
さらに、左心房に隣接している左心室が左房充填の固さに拍車をかけているともされています。
以上の事から右房ではv波が上昇しにくいため、a波 > v波となり、
左房ではv波が上昇しやすいため、a波 < v波となります。
ポイント
- 左房はコンプライアンスが低いためv波が上昇しやすい
- 右房はコンプライアンスが左房よりいいためv波が上昇しにくい
- 各々の前にある静脈が圧に影響している
- 左心室が左房に影響しているともされている
・疾患別の心房圧
AVブロック
房室解離や完全房室ブロックで心房収縮が心室収縮期のQRSのなかに入ると通常よりa波は増大し巨大a波(cannon a wave)が見られます。
心室の収縮時に心房が収縮しても圧負けして房室弁が開かず、心房圧が容易に上昇するのは想像がつくかと思います。
2:1AVブロックではa波が出た後はv波が無くなる。心室の収縮が無いためy波が無くv波としての山が無くなってしまいます。
![](https://cekyoblo.com/wp-content/uploads/2022/07/image-1024x592.png)
収縮性心膜炎
収縮性心膜炎では心膜の線維化や肥厚によって心室の拡張不良が起こります。
それに起因して、右心房でa波、v波の上昇、y波の下降が強調されてしまいます。
そのため右房圧は「M」または「W」字型を示すようになります(M型、W型)
![](https://cekyoblo.com/wp-content/uploads/2022/07/image-1.png)
房室弁狭窄症
房室弁が狭窄すると心房の後負荷が増大します。
ということは心房の収縮の仕事量が増えるのでa波が増大します。
三尖弁が狭窄すれば右心房のaが増大し、僧帽弁が狭窄すれば左心室のa波が増大します。
メモ
後負荷が増加するとa波が増高する
心室のコンプライアンスが低下してもa波が増高する
房室弁閉鎖不全
房室弁の閉鎖不全が起きると心房の拡張期に容量が増加します。
ということは心房の拡張期を反映しているv波が増高します。
三尖弁の閉鎖不全では右房のv波が、僧帽弁の閉鎖不全では左房のv波が増高します。
また、ASDがあると左房から右房へのシャントが起きるので右房のv波は増高します。
左房では左室の拡張障害が起きても結果的に容量増加に繋がり、v波が増高します。
メモ
心房の容量が増加すると心房のv波が増高する
心房のコンプライアンスが低下してもv波が増高する
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