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【冠動脈バルーン】これだけは最低限覚えて治療に挑もう!!


カテーテル治療で使用するバルーンの基礎。
バルーンが無ければ治療は始まらないと言えるでしょう!!

カテ初心者の方でしたら抑えておいて欲しい内容にしました。

セミコン?ノンコン?OTW?
カタカナ多いなぁ...


苦手な人もいるであろうカタカナ用語。
しかし、PCIにおいてはとても重要で、理解してなければ治療に挑めないといっても過言ではないです。

そんな基本的である内容をまとめます。

OTW?モノレール?

バルーンやステントなどのデバイスはワイヤーに乗せて病変部に進めます。
その中で、OTWとモノレールではワイヤーへの乗せ方が異なります

バルーンカテーテルにバルーンを膨らますルートとワイヤーが通るルートがあります。
このワイヤーが通るルートがカテーテル全体か、先端部のみかの違いがOTWとモノレールの違いです。

ポイント

OTW   カテーテル全体をワイヤーが通る
モノレール 先端部のみワイヤーが通る



OTW (Over the wire)

ワイヤーが通るルートの後端が血管外なのでワイヤーの交換が可能という特徴があります。
また、バルーンを押す力がカテーテル全体に伝わるのでプッシャビリティが期待できます。

しかし、蛇行などに弱く、血管追従性が良くないので最近では使用頻度が減っています。
また、マイクロカテーテルがワイヤー交換に使用できるのでより使用頻度が減少しています。
そのため、最近ではモノレール型が好まれて使用されています。

PCIでは問題ないですが、他の治療部位によってはモノレール型が保険適応外な事がまだまだあるので、覚えておきましょう。

モノレール

バルーンの先端からやや手前にワイヤーエグジットポートがあり、そこからワイヤーが出てきます。
OTWと異なり、ワイヤーの交換はできませんがバルーンの交換は容易にできます。
血管内を進めるのはOTWよりも追従性は良好ですが、プッシャビリティは低いです。

現在PCIではモノレール型が多く使用される。

セミコン?ノンコン?

バルーンは固さ別に2種類に大まかに分けられます。
「セミコンプライアンス」と「ノンコンプライアンス」を略して「セミコン」、「ノンコン」

「セミ」は"semi”で「一部」や「半分」といった意味で
「ノン」は"non”で「無い」という意味です。

セミコンプライアンス

柔らかい素材でできており、病変通過性の高い事が最大のメリットです。

病変通過性がある代わりに拡張力が弱いです。バルーンで拡張後にステントを留置するために内腔を作るのが目的で使用されることが多いです。


他の使用目的としては

メモ

・ステントストラットの拡張
・KBTの側枝用
・バルーンスリッピングテクニック


などでも使用されます。

注意として、高度石灰化病変に使用した場合にドッグボーン現象(下図左)に注意する。
これはバルーンが柔らかいので圧をかけた時に正常血管壁に圧が逃げてしまうのでこういった現象が起きます。

石灰化のエッジ(端)で拡張すると石灰化が正常血管を傷つけて穿孔、解離を引き起こすことがあります。
ですので、石灰化病変に対して拡張する際にはバルーンサイズの選択に注意する。

正確には拡張すると血管壁が押されるので血管が押し広げらるように膨らみます。

ポイント

通過性の高いバルーン
柔らかい素材のため拡張力は弱い

ノンコンプライアンス

ノンコンプライアンスバルーンは名前に「NC」と略して書いてあります。

硬い素材でできており、拡張力があるのでしっかりと広げられます。

ですので、ステント留置後にしっかりと血管壁に圧着させたい時や石灰化病変に対して内腔を得るため、石灰化にクラック(亀裂)を入れたいときなどに使います。
石灰化の厚さや長さによってはセミコンでもクラックを入れる事ができる時もあります。

拡張力をメインとした結果、通過性能は低くなります。
また、硬い素材という事もあり、拡張力がバルーン接地面の血管壁全体にかかります。全体にかかるのでドッグボーン現象が起きにくいです。


主な使用用途

ポイント

硬い素材で拡張力がしっかりとある
ステント留置後の圧着のために使用
石灰化にクラックを入れるために使用

スコアリングバルーンについて

スコアリングバルーンまたはカッティングバルーンはバルーンの表面にワイヤーがあります。
このワイヤーがあると拡張時にプラークに切れ込みをいれたり、石灰化に対してより強い荷重を加えて亀裂を入れることが期待できます。
切れ込みが入ることによって、より内腔が取れたステント留置が期待できるようになります。

メーカーによって、バルーンに沿ったワイヤー数が異なります。
また、ワイヤーとは言わずにブレードと表記してあることもあります。

ポイント

プラークに切れ込みを入れることが期待できる

ノミナール?レイティッド?

バルーンには「推奨拡張力」と「最大拡張圧」があります。
それぞれ英語で”Nominal Pressure”、 ”Rated Burst Pressure"と言います。
略して”NP”、”RBP”と表記されていることが多いです。

表記は英語でも、読むときには略して「ノミナール」「レイティッド」と医師はいう事がほとんどです。
換算表がバルーンの箱や梱包袋にかいてありますので清潔野に出す際に値を伝えながら出したり、聞かれてもすぐ答えられるようにしておくとGoodだと思います。

RBPはメーカーが定めたバルーンが破裂しない限界圧力なので、基本的にはこの値を超えないように加圧します。
石灰化への拡張が原因でRBPに達する前にバルーンが破けてしまうことがあるので注意してください。


ちなみに、セミコンバルーンのNPは10気圧未満で、ノンコンバルーンのNPは10気圧以上がほとんどです。


ポイント

ノミナール:推奨拡張圧 10気圧未満
レイティッド:最大拡張圧 10気圧以上

まとめ

今回はPCIにおけるバルーンについてまとめました。
バルーンは治療においては必ず使うと思いますで整理して治療に臨みましょう。
特に構造や用途、特徴を覚えておくと”Good”です。

バルーンの構造、用途などは脳血管領域でも末梢領域でも共通する内容が多いですので一度覚えれば様々な領域で活用できます。

 

冠動脈ステントDESとBMSの特徴

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ガイドワイヤーについて紐解こう

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西日本コメディカルカテーテルミーティング (著, 編集)
及川 裕二 (編集)

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