脳動脈瘤に対してのカテーテル治療はコイルを詰めるしかない・・・
そんな常識がなくなるシステムがあります。
それが「フローダイバーターシステム」です。
条件はいくつかありますが、
コイルを使わなくても動脈瘤の治療ができるものとなっています。
商品としては
・TERUMO社製の「FRED」 フレッド
・Medtronic社製の「PIPLINE」 パイプライン
・Stryler社製の「Surpass」 サーパス
があります。
目次
・フローダイバーターの適応は?
どんなものにも適応が決められており、ルール決めがされています。
当然ながらフローダイバーターにも適応が決められているので紹介します。
- 内頚動脈の錐体部から床上部及び椎骨動脈
- 最大瘤径が5mm以上
- ワイドネック型(ネック長が4mm以上、若しくはドーム/ネック比が2未満)
- 破裂急性期は除く
という適応の制限があります。
添付文書上だとこのように書かれています。
このままだとやや想像がつきにくいかもしれませんので、
解説を少し混ぜますね。
1.適応の血管部位
簡単に言うなら内頸動脈(ICA)と椎骨動脈(VA)が適応という事です。
内頚動脈ではC1~C5の範囲に限られている。
2.最大瘤経が5mm以上
これはシンプルに動脈瘤の大きさが長いところで5mm以上あれば使用できるという事です
動脈瘤はまん丸ということはまずないので、長軸(一番長いところ)で5mm以上あれば使えます。
動脈瘤は楕円だったり、紡錘状になったりします。
3.ネックの長さが4mm以上
ネックというのは動脈瘤の基部のことです。
くびれとも言ったりしますが、ネックが大きい症例で使用できます。
また、「ドーム/ネック<2」というのは
(動脈瘤の経)/(ネック、くびれ)の値(比)が2未満
という事です。
4.破裂急性期は除く
動脈瘤が破裂してしまった患者さんには適応外となるので使用しないように。
そういった患者さんに治療する場合はコイル塞栓術を行って治療をする。
外科的に治療するのならクリッピング術を行う。
・フローダイバーターってどんなもの?
フローダイバーターは簡単に言うと、網目の細かいステントです。
一般的にステントは網目は細かくなく、セルが大きいものがほとんどです。
しかし、フローダイバーターは動脈瘤内への血流を減らすことが目的のため、網目が細かく、メッシュ状となっています。
血管側枝に被せてしまうと血流は当然ながら減少するので注意が必要です。
他のステント構造は制作会社毎に若干異なります。
ポイント
動脈瘤内への血流を減らすためにメッシュ状のステント構造
Medtronicホームページより「フローダイバーターとは」
https://www.medtronic.com/jp-ja/healthcare-professionals/products/neurological/hemorrhagic-stroke/pipeline-flex13.html
ここでフローダイバーターのコンセプト
大型・巨大動脈瘤に対して使用する網目の細かいステント。
動脈瘤のネックを覆うことで、血流を減らして瘤内の血栓化を促進させるのと同時に、
ステントに対して新生内膜を形成することで血管の修繕を促すことが期待できる。
動脈瘤のサイズ・形状によるが、コイルを使用せずに治療を終えられる症例もある。
なので、コイル塞栓術よりも圧倒的に時間短縮になることを期待できる。
大型・巨大動脈瘤に対してはコイルを併用した治療が一般的となっている。
ポイント
動脈瘤の血栓化
新生内膜の形成で血管修復
治療時間の短縮
治療成績(PIPELINE:Medtronic)
アメリカ、カナダで行われたPREMIER試験では
・1 年後の動脈瘤完全閉塞の主要有効性は76%程度
・1 年以内の脳卒中及びそれに伴う関連死亡における主要安全性は 2.2%
また、PUFs試験では
・1年後完全閉塞率は73%程度、5年後は95%程度
・治療後6か月以内の同側重症脳卒中の発生率は5.6%程度
・6か月以降の重篤脳卒中の報告はない
治療効果も安全性も問題ないステントデバイスとなっています。
※メドトロニック社製の治療成績です。
他社製品も臨床使用されており、問題はないとされています。
しかし、学会にて8mm以上(記憶では...)の大きい動脈瘤に対しては再治療のケースになることが多くなると言っていたと思います。
大きすぎる動脈瘤にはやはり治療成績は落ちるようです。
また、製品ごとに特長があるという見解があるそうです。
FREDでは送達制度、展開のしやすさがある
Surpuseでは拡張力、radial forceがある
などと言われているようです。
ですので、病変、血管性状に沿ったデバイス選択が必要となりそうです。
最低限覚えたい脳血管【脳血管の解剖】 Part.1
脳動脈瘤コイル留置の補助テクニック