ワイドネックとは動脈瘤の基部が広い状態のことを言います。
補助テクニックはそんなワイドネックの動脈瘤への治療時に用いられるテクニックです。
メモ
テクニックの種類としては
- バルーンアシストテクニック
- ダブルカテーテルテクニック
- ステントアシストテクニック
などがあります
・バルーンアシストテクニック
この方法は難易度としては容易で体内にコイル以外の異物を残さずに済みます。
母血管には異物無しで治療を行えるということです。
メリットとして、仮に瘤の破裂が起きたとしてもバルーンを拡張することで一時的に止血ができます。
デメリットとしてバルーン拡張中は血流が遮断されてしまいます。
また、コイルを留置してもバルーンを収縮させるとコイルが母血管へ脱落してしまう事もあります。
バルーンの選択としては
コンプライアンスタイプとより柔らかいスーパーコンプライアンスタイプがあります。
スーパーコンプライアンスタイプを用いるとバルーン拡張時に瘤内にバルーンの一部が突出します。これによって、瘤基部の側枝温存が期待できます。
このテクニックをハーニエイションテクニック(herniation technique)といいます。
しかし、このHerniationテクニックはネック部分を損傷することがあるので十分に注意する。
バルーンの過拡張、バルーンの拡張状態などを透視で十分に確認しながら治療を行う。
ポイント
まとめ
難易度:容易
メリット:母血管に異物を残さない
:術中出血時にすぐに止血、閉塞ができる
デメリット:バルーン拡張時は血流が遮断される
:広すぎるネックには不適でコイル脱落の可能性
:バルーンによる血管損傷のリスク
ポイント:バルーン内の造影剤は透視での視認性をあげる
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・ダブルカテーテルテクニック
この方法もバルーンアシストテクニックと同様に母血管には異物を残さずに治療することができます。
通常、1本のマイクロカテーテルを動脈瘤内に入れてコイルを巻いていきますが、ダブルカテーテルテクニックでは瘤内にマイクロカテーテルを2本入れて、コイルを絡ませ合いながら動脈瘤塞栓を行います。
バルーンアシストと異なるのが血流の遮断が無くて済むというメリットがあります。
また、いびつな形をした動脈瘤にも効果的なテクニックとされています。
しかし、難易度としては難しく、経験が必要なテクニックのようです。
いびつな形、多彩なコイルの動きが見られるので巻き方に難渋。。。
2本のコイルを調整しながら巻いていくので難易度が高いようです。
デメリットとして、使用するガイディングカテーテルの径によってはマイクロカテーテルを2本入れたら他のカテーテルデバイスが入らない事があります。例えば、術中出血が起きた時のバルーンカテーテルは同時に入れておけないなどです。
しっかり治療戦略を立てたうえでのカテーテル選択が必要です。
ポイントとしてはコイル量が増えると2本のマイクロカテーテルの識別が困難になるので、種類の異なるマイクロカテーテルを使用すると良いです。手元の操作がわかりやすくなります。
また、1本目のコイルはしばらく切り離さず、2本目3本目と何本か巻いて切り離した後に1本目を切り離す方が安定して巻くことができます。
ポイント
まとめ
難易度:難しい
メリット:母血管に異物を残さない
:いびつな瘤に対しても効果的
:治療中血流遮断が無い
デメリット:経験が必要なテクニック
:カテーテルが干渉することがある
:使用デバイスに制限が出る
ポイント:マイクロカテーテルは異なる物を使用する
:1本目のコイルはすぐに切り離さない
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・ステントアシストテクニック
ステントをネックに留置することでより確実に母血管を温存することができます。
ステントを置くのでコイルの脱落や逸脱などのリスクを大幅に抑えられます。
手技手順や手技経過によって難易度が変わります。
しかし、永久留置となるので抗血小板薬の継続が必要になります。
冠動脈の治療後と同様にDAPTやSAPTを始めます。
コイルがうまく巻けなく、マイクロカテーテルの位置調整をしたくても操作が難しかったり、入れ替えは難しくなります。
ポイントとしては「トランスセル法」、「ジェイル法」、「セミジェイル法」などのテクニックがあり、ケースによって戦略を検討する。
ステントの長さはネックの前後4mm以上余裕を持たせる。
推奨すべきではない症例としては
抗血小板薬を使用していくことになるので出血性がある場合や近日中に手術予定の場合、術後内服が困難な患者背景などの場合はステントアシストテクニックは推奨ではない。
ポイント
まとめ
難易度:症例によっては難しい
メリット:母血管をより確実に温存できる
:コイルの脱落、逸脱リスクが低い
デメリット:抗血小板薬の継続が必要
:出血傾向となる
:マイクロカテーテルの操作性が悪くなる
ポイント:症例や手技経過によってテクニックを使い分ける
:ネックの前後4mm以上余裕を持たせる
トランスセル法
トランスセル法は最初にステントを留置し、その後にステントの網目にマイクロカテーテルを通してコイルを留置するテクニックです。
カテーテルのキックバックや塞栓が不十分な際に行う方法でもあります。
このテクニックではマイクロカテーテルがスタック、引っ掛かることが少ないためトラブルは少ないです。
しかし、ステントの網目を通さなければならないのでやや難しい方法です。
また、十分にマイクロカテーテルが瘤内に入らない事もあるので、バックアップが不十分で操作性が落ちることもあります。
ステントの種類によっても難易度が変わります。オープンセルタイプでは網目のつなぎ目が少ないので入りやすいですが、クローズドセルタイプではつなぎ目が多いことからトランスセルすることが難しくなります。
ポイント
トランスセル法とは (Trans cell technique)
ステントの網目にマイクロカテーテルを通してコイルを留置するテクニック
メリット
マイクロカテーテルのスタックがない
塞栓が不十分な際でも行える
デメリット
手技が煩雑となる
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ジェイル法
ジェイル法はマイクロカテーテルを初めに瘤内に留置した後にステントを留置する方法です。
マイクロカテーテルが先に留置されるのでステントによってマイクロカテーテルが安定します。
コイルを巻く時にマイクロカテーテル脱落がまずなくなります。
しかし、デメリットとしてマイクロカテーテルがスタックしてしまい、抜けにくくなることがあります。
ステントの圧着力(radial force)に注意して適正なステント径を選択します。
一般的にはこの方法が第一選択として用いられます。
ポイント
ジェイル法とは (jail technique)
マイクロカテーテルを初めに瘤内に留置した後にステントを留置するテクニック
メリット
マイクロカテーテルが安定する
デメリット
マイクロカテーテルがスタックすることがある
ジェイル法が最も一般的
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セミジェイル法
セミジェイル法はステントを部分的に展開した状態でコイル塞栓を行う方法です。
一般的には先にマイクロカテーテルを瘤内に入れた後にステントを部分的に展開します。
この方法ではマイクロカテーテルがスタックすることはあまり起きません。
また、制限はありますがマイクロカテーテルの位置調整もジェイル法よりかは融通が利きます。
医師によってはこの方法が第一選択なこともあるようです。
この方法はカテーテルデバイスが密になるので長時間であったり、母血管の径が細かったりすると血栓リスクが上がりそうだな。。。
と個人的には思っています。
ポイント
セミジェイル法とは (semi-jail technique)
マイクロカテーテルを初めに瘤内に留置した後にステントを部分的に展開するテクニック
メリット
マイクロカテーテルのスタックが起きにくい
位置調整も融通が利きやすい
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ちなみにですが、、、
ステントアシストテクニックと似た手技があります。フローダイバーターを用いた治療方法です。
この方法と区別するためにneck bridge stentとも言われることもあります。