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頭蓋内動脈狭窄とは?

日本人を含む東洋人に多い「頭蓋内動脈狭窄」は
カテーテル治療での期待が大きい分野の一つです。

今回はそんな脳血管動脈の狭窄についてまとめていきます。

原因は主に3つ

頭蓋内動脈が狭窄する原因は主に

・動脈硬化
・解離
・攣縮

の3つとなっています。主な治療法としては
動脈硬化には「バルーン拡張術(PTA)」
解離には「ステント留置」
攣縮には「PTA」または「血管拡張薬」
となっています。

動脈硬化による狭窄

治療目的としてはCAS(頸動脈ステント留置術)と同様に血管を拡張することが目的となっています。

動脈硬化に対してPTAのみを行うのみであっても
長期的にはリモデリング効果を得て、さらに拡張することがある。

再狭窄やリコイルに対してステント留置を行って予防することもある。
このステント留置は適応外のようでステントの使用は
各施設、医師の判断によるもののようです。


脳塞栓を併発することもあります。
動脈が細くなることで血流が滞り、血栓が形成されて詰まってしまうことがあります。

なので血栓吸引したのち、造影すると血管が細くなっていることが分かる
というパターンもあります。

ポイント

血管拡張が治療の目的
治療の基本としてはバルーン拡張を行う

血管枝の閉塞のリスク

頭蓋内血管のバルーン拡張は保険適応もある治療法ではあるものの当然リスクがあります。

冠動脈治療の際にも問題になるプラークシフトが
頭蓋内の治療でも起きることがあります。
特に穿通枝が多いM1、BA領域では注意が必要です。

頭蓋内血管治療領域では「snow plowing effect:雪かき現象」などと言います。
除雪作業で起きる現象に似た動きから言うようです。図1

これにステントを併用すると移動したプラークが保持されてしまうので、
この新しい狭窄の解除が難しくなってしまいます。

図1 snow plowing effect

むやみなPTAやステント留置は更なる合併症を引き起こすので注意が必要です。

血管造影を見て適応性をしっかりと判別した治療方針の決定を
神経内科医などと共に決定することが推奨される治療となっています。

ポイント

穿通枝や血管枝が絡む治療は要注意
snow plowing effectが起きてしまうことがある

治療中に生じた急性閉塞や解離

治療中に急性の閉塞や解離が起きることがあります。
そういった時にはPTAのみでは不十分となり、ステントを用いることがあります。

ストライカー製のWingspanというステントを用いて対処します。
※緊急なため適応外のステントを用いることもある

添付文書 使用方法に
・血管形成術時に生じた血管解離、急性閉塞又は切迫閉塞に対する緊急処置
・他に有効な治療法がないと判断される血管形成術後の再治療
と記載されています。


使用の際には緊急性があるものの、抗血小板薬が必要になるため、
出血性の患者には向いていない事や

ステント留置によるsnow plowing effectも懸念されるため
やはり、神経内科医との相談が必要であることがある。

ポイント

緊急的閉塞、解離に対してステント留置をすることがある
ステント留置の利益、リスクを検討する

ストライカー製Wingspan Stent System 製品ページ
添付文書

急変時対応

治療の過程でコントロールできない合併症が生じてしまう事があります。
もろくなっていた血管に対する治療ではリスクがつきものです。

穿通枝閉塞によって脳梗塞が生じた時には梗塞域の軽減のための薬物療法を行います。
血管破裂など出血性の合併症が起きた時にはバルーンを拡張したまま開頭手術に移行し救命することなどもあります。
バルーン拡張を維持したままでは広範囲の梗塞を起こり得ます。

造影で異常がないか、血圧の急激な変動がないかなど患者状態には気を掛けておきましょう。

ポイント

・脳保護薬の準備
・脳血管出血のためバルーン拡張したまま外科治療への移行
これらの対応を想定しておく

解離による狭窄

日本人における脳血管の解離は椎骨動脈(VA)にて最も多く起こります。

しかし、VAの血流は対側からによって保たれることが多く、自然経過で改善することがあるため
治療対象とならないことがあります。

一方で中大脳動脈、M1部での解離はその部位に血栓を形成し、脳塞栓と似た症状を起こすことがあります。
血管造影を行っても解離と塞栓の鑑別が難しい。
血栓回収後にアテローム性の狭窄か解離かわかることがあります。


医原性による解離はPTAや血栓回収を施行中に起きます。
なので、思わぬ解離の治療が必要になることがあるので注意しておきましょう。


治療自体は適切なサイズのステントを病変部に置けばよく、
自然発生であっても医原性であっても
真腔を通ったワイヤリングの後にステントを留置します。

攣縮,スパズム

くも膜下出血の後に遅延性に発症することやカテーテル操作による血管への刺激などで起こることがあります。

攣縮により血管が細くなり、血流が減少してしまいます。


治療としてはバルーンで拡張または血管拡張薬の投与があります。
狭窄の程度が強くなければ自然に回復するのを待つこともあります。

頭蓋内主幹動脈(willis輪)であったり、部分的な攣縮であれば
バルーンでPTAを行うことがあります。

バルーンはコンプライアントの柔らかいものの方がベターではあります。


びまん性や末梢で起きている攣縮には
血管拡張薬(塩酸ファスジルなど)を静注,局所的に動注することもあります。

薬剤投与しても改善の傾向が無い場合には解離の可能性など他の原因も検討する。

札幌西孝仁会クリニック 脳神経外科 (著)

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