EVT

大動脈-腸骨動脈領域の治療 Ao-illiac

比較的治療成績が良好と言われている大動脈腸骨動脈(Ao-illiac)領域のEVTについてまとめます。


主に総腸骨動脈、内腸骨動脈、外腸骨動脈の血管内治療となります。
血管径も大きく、アプローチもさほど難しくないため治療成功率は高いです。

治療時の注意やアプローチをメインにまとめていきます。


下肢治療のEVT自体についてはざっくりとこちらでもまとめていますのでご確認ください。
内容もやや被る点もあります。⇩⇩⇩

下肢虚血の第一歩 

・アプローチ方法が多彩

当然のことながらアプローチは順行性逆行性があります。

Ao-illiac領域ではどちらのアプローチ方法でも容易に組めます。

メモ

  • 同側逆行性のアプローチ
  • 対側順行性のアプローチ
  • 上腕(橈骨)動脈アプローチ

これらがメインなアプローチ方法かと思います。


「同側逆行性のアプローチ」は病変部位に対して末梢側からシース、カテーテルを挿入して治療を行うアプローチ

「対側順行性のアプローチ」は病変の足とは反対の鼠径からシース、カテーテルを挿入して治療を行うアプローチ
クロスオーバーアプローチと言われ、内腸骨動脈の分岐を越えて治療する。

「上腕(橈骨)動脈アプローチ」は主に左の上肢からカテーテルを挿入して治療を行う。
カテーテル挿入部位から病変までの距離が長く、バルーンやステントに制限がかかってしまうデメリットがあります。

・上腕(橈骨)アプローチの注意

上腕動脈や橈骨動脈からアプローチする時にはいくつかの注意事項があります。

上腕動脈にシース、カテーテルを挿入する時には神経損傷に注意が必要です。
上腕動脈の周囲には正中神経が走行しており、十分注意してください。

さらに、骨が後ろにないため、圧迫をしにくいので止血時にも注意です。


EVT治療時ならではの注意としては使用できるカテーテルに制限が生じます。

上腕動脈や橈骨動脈からでは病変部が刺入部から遠くなるので
カテーテル物品が届かないことがあります。

せっかく術野に出しても意味のないカテ物品になってしまいます。

IVUSを使用する時に注意です。
メーカによっては届かないことがあります。

メモ

Eagle eye (150cm)
Naviforcus WR (154cm)
・Alta view (137cm)
・Opticross  (135cm)

少なくとも150cmの長さは欲しいところですので
「Eagle eye」か「Naviforcus WR」が上肢からのアプローチでしたら推奨になるとおもいます。
Eagle eye platinum ST:Philips(フィリップス)
Naviforcus WR:TERUMO(テルモ)


ポイント

  • 正中神経の損傷に注意(上腕アプローチ時)
  • 止血時に圧迫不良に注意(上腕アプローチ時)
  • 病変部まで届くカテーテル物品の選定

・クロスオーバーアプローチ時の注意

対側順行性でアプローチする時にはガイディングカテーテル(GC)のアプローチが難しくなります。

言ってしまえば「Uターン」するようにGCを進めなければいけません。
なので、血管の蛇行や屈曲などでそもそもアプローチができないこともあります。


Uターン部分でバックアップの力が減り、カテーテルの操作性も低下するようです。

また、病変が総腸骨動脈の起始部からある場合ではGCがengageできない、浅くなってしまうこともあります。
そういったケースでは対側からのアプローチは不適となります。

ポイント

  • GCのengageがやや難しくなる
  • バックアップ低下(Uターン部分で取られれる)
  • 総腸骨動脈の起始部病変には適さない

・治療成績

比較的手技の成功率は大腿膝窩動脈や下腿動脈に比べると良好です。

>95%の成功率という報告があります。

再狭窄率も10~20%と比較的良好です。
coronaryと比べると低いですが・・・

メモ

Ao-illiac領域では下肢の中では治療成績は良好

・合併症

遠位塞栓

Ao-illiac領域の太い血管のプラークには必ずと言ってもいいほどソフトプラークがあります。

なので時折、治療でバルーン拡張やステント留置を行うと遠位塞栓を起こします。

メモ

対策としては

  • フィルターカテーテルを使用
  • バルーン付きガイディングカテーテルを使用

などがあります。

フィルターでプラークを補足したり、
GCに付いているバルーンを拡張しておいて、後にシリンジなどでGC先端からプラークを吸引したりして対策できます。

血管破裂 ラプチャー

時折、ワイヤーリングで血管を貫いてしまって穿孔を起こすこともあります。

Ao-illiac領域での穿孔は穴が大きくなりやすいので大出血の危険があります。
そのまま出血性ショックもあり得るので要注意です。


メモ

対策としては

  • 径が十分なバルーンを穿孔部位で長時間拡張して血管内から止血する方法
  • Viabahnというステントグラフトを留置する
といった方法があります。

そもそも術者が血管の中心をワイヤーリングするように心がけて、
穿孔を起こさないことも大事です。

・ステント留置時の注意

ステントを留置する時はアプローチに対してdistalに合わせるようにする。

と言うのもステントはカテーテルのdistalから拡張します。

血管の蛇行や狭窄などによって、長さ10cmのステントだとしても
拡張時には引き伸ばされて11cmや12cmになってしまうことがあります。

なので、ステント留置時には要注意です。


特に総腸骨動脈の分岐部病変では対側の血管にステントがはみ出ないようにしたいので注意です。
総腸骨動脈の治療ではアプローチを上肢(上腕、橈骨)から行うこともあります。


しかし、ワイヤーリング、pre拡張していざステントを留置した時にはステントが対側の総腸骨動脈にはみ出てしまうことがあります。
なので、ステント留置するには鼠径からアプローチした方が良いのです。

腸骨動脈のdistal合わせでステントを置きたい時は上腕アプローチの方が合わせやすいです。


一方で、穿刺部位が2か所になってしまうので治療戦略は要確認!

ポイント

ステントはカテーテルdistal側から拡張される
総腸骨動脈の起始部でのステント留置は鼠径アプローチの方が基部合わせやすい
・アプローチ/穿刺部位の数が増えてしまう

・ショットガン-ステンティング shotgun stenting

ショットガンステンティングは2本のステントを同時に広げるステント留置方法です。
分岐部病変で行うステント留置法で、Ao-illiac領域においては少なくない方法かと思います。

大動脈から左右両方の総腸骨動脈に病変がある時に用います。


このステント留置方法では注意事項があります。

メモ

・同じ種類、メーカのステントを使用する
・同じ径のステントを使用する

これは同じものでないと拡張力(radial force)が異なってしまい、片方のステントがもう片方のステントを圧排してしまう事があるためです。
その結果、ステント破損になってしまう可能性があります。

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