比較的治療成績が良好と言われている大動脈腸骨動脈(Ao-illiac)領域のEVTについてまとめます。
今回は大腿動脈の血管内治療についてまとめます。
腸骨動脈領域ほど治療後の開存率は高くはありませんが、手技成功率高いとされています。
治療戦略、ストラテジーが豊富な領域なのでどんなものがあるか書いていこうと思います。
下肢治療のEVT自体についてはざっくりとこちらでもまとめていますのでご確認ください。
内容もやや被る点もあります。⇩⇩⇩
下肢虚血の第一歩
目次
・SFA治療の概略
手技成功率は99%以上と言われています。
ほぼ確実に成功するといっても過言ではないデータですね。
こちらのサイトに掲載されています。
「循環器トライアルデータベース®」
https://www.ebm-library.jp/circ/trial/doc/c2005574.html
一方で再狭窄率は30~50%程度で、10人中3~5人は再狭窄してしまうそうです。
手技の成功率は高くても再び狭窄は起きやすいと言えるようです。
治療に対しては様々なデバイス、アプローチを検討できるため多彩なストラテジーを組むことができます。
ポイント
手技成功率が高い
New deviceが多く、ストラテジーを立てやすい
開存率は高くない
・PTAデバイス
DCB 薬剤コーティングバルーン
DCBとは再狭窄を予防する薬がバルーンに塗ってあり、狭窄部で拡張することで薬剤を塗布するためのバルーンカテーテルです。
冠動脈領域でもDCBはあるので十分ご存じかとは思います。
IN.PACT、LUTONIX、Rangerの3種類が使用可能となっています。
コーティングされている薬剤は主にパクリタキセルというものです。
メーカーごとに推奨している拡張時間が異なっています。
IN.PACTとRangerは180秒以上、LUTONIXは30秒以上と添付文章に記載されています。
メモ
拡張時間
IN.PACT、Ranger 180秒以上
LUTONIX 30秒以上
それ以上の病変にはステント留置が推奨となります。
また、重度石灰化病変には不向きで、解離が起きている場合には使用禁止となっています。
ポイント
重度石灰化病変であったり、解離していたら使用しない
DES 薬剤溶出型ステント
DESとはステントに薬剤コーティングしているステントです。
こちらも冠動脈領域にあるものなのでご存じかと思います。
EVTで使用されるDESはバルーン拡張型ではなく、自己拡張型となっています。
現在は「Boston社製ELUVIA™」、「COOK社製Zilver® PTX®」の2つが使用可能です。
DCB同様にこの2つもパクリタキセルがコーディグされています。
ELUVIAに関しては短い病変であれば後述する
ステントグラフトの「Viabahn」と同等の開存率を得ることができるそうです。
病変部の前拡張によって解離が起きてしまっても使用することができます。
しかし、重度石灰化には十分な拡張を得られない事が多く、不向きとなっています。
ポイント
解離が生じても使用可能
重度石灰化には不向き
ステントグラフト Viabahn
ステントグラフトといえば「GORE」ですね。
GORE社製の「Viabahn」が使用可能です。
ステントの内側に人工血管(主にポリテトラフルオロエチレン:PTFE)があるステント付き人工血管です。
当然ではありますが、人工血管の要素もあるので解離が起きてもしっかり血管内に留置し、解離のエントリーをカバーできればとても有用なデバイスとなります。
デメリットとしては人工血管で血管側枝をカバーしてしまうとその血管には血液が流れなくなるので留置には注意です。
PTFEは生体適合性が良く、再狭窄率が低いことから開存率が90%超えるほど高いです。
ただし、エッジ部分(ステントグラフトの両端)には再狭窄は起こり得ます。
また、残念ながらこちらもDES同様に重度石灰化には不向きです。
いくら人工血管を用いても、石灰化によってステントグラフトが広がらず、血管内腔を得ることができなければ意味がありません。
ポイント
開存率が高い
解離にも効果的
血管側枝のオーバーラップに注意
重度石灰化には不向き
SUPERA ステント
このステントは私自身は実際の症例で見たことないです。
なのであくまでも私自身が学んだ内容でしかないです。
いつか、医師が使用してくれる日を楽しみにしています。
ポイント
長い病変でも開存率が高い
重度石灰化にも他のデバイスよりも効果的
留置に時間がかかる
ステントの留置の仕方によって長さが変わる
・様々な「治療デバイス」
CROSSER クロッサー
クロッサーとはCTO病変などの石灰化に対して振動するカテーテルを押し当てることで石灰化を切削できるデバイスです。
イメージしにくいと思うので動画を載せておきます。
用途としてはガイドワイヤーのみでは石灰化病変を通過できない時に使用します。
準備する物品
・冷却したヘパリン加生理食塩水
・清潔の点滴ルート
・生理食塩水充填用シリンジ
冷却した生理食塩水は振動するカテーテルは熱を持つのでそれを冷やすために必要です。
点滴ルートは充填用シリンジに生理食塩水を入れるために使用します。
他にも三方活栓があると便利です。
CROSSERの組み立てなどはまたいつかまとめようかと思います。
OUTBACK® Elite Re-entry Catheter
アウトバックリエントリーカテーテルもSFA領域では使用する事があります。
以前にまとめてあるのでよろしければ参照してください。
OUTBACK reentry カテーテルとは?
簡単に説明すると
石灰化やCTOなどでサブを通って病変Distalまでワイヤーが進んだ際に、このアウトバックリエントリーカテーテルを用いることで血管内膜を破ってTrue lumenを通すことができるデバイスです。
出番としては少ないとは思いますが、いざっていう時があるかと思います。
・様々な「治療戦略」
病変を拡張させるためにはガイドワイヤーを病変部を通過させなければいけません。
そのために様々な治療戦略があります。
メモ
SFAに関しての一例
・逆行性アプローチ(表パン、表膝パン)
・Rendezvous Technique
・BADFORM Technique
Rendezvous Technique(ランデブーテクニック)と逆行性アプローチについても以前まとめているのでそちらをよろしければ参照してください。
ランデブーは○○○○カテーテルが必要!
BADFORM Technique バドフォームテクニック
バドフォームテクニックとはアンテから入れたバルーンをガイドワイヤーに固定させた状態でレトロから強引に引っ張ることで狭窄部を通過させるテクニックです。
BAloon Deployment using FORcible Manner の文字から来ています。
バドフォームテクニックの行い方を図示します。
CTO病変や高度石灰化病変に対してガイドワイヤーを通します。
この時、レトロアプローチを用いてガイドワイヤーが通っている状況とします。
バルーンを通したいけど、高度の石灰化のためにバルーンが通過しない時にバドフォームテクニックを検討します。
押す力はバルーンカテーテルのシャフトに逃げて湾曲したりしてしまいますが、引く力ではトロッカー部分に集約されるので狭窄部を通過することができます。
しかし、過度な力が加わることがあるので血管がちぎれてしまうといったリスクもあるので注意です。
このテクニックをするまでには時間がかかります。
レトロアプローチを組まなければいけませんし、ガイドワイヤーが通過しなければないけません。
ここまでにランデブーテクニックを駆使したりすることもあるかもしれません。
言葉で書くと容易かもしれませんが、実際はそうでもないことが多いです。
ましてや、血管損傷が起きたら最悪です。
なのでよく注意しながら手技に参加しなければいけません。
ポイント
高度狭窄対してバルーンを通過させるのに有効なテクニック
血管損傷に十分に注意する必要がある