冠動脈内でワイヤーが切れてしまったら。。。
ステントが冠動脈内で脱落してしまったら。。。
症例数としてはどちらの施設でも決して多くはないはずです。
総カテーテル治療件数にもよりますが、年に1,2回程度くらいでしょうか。
私自身は年1で経験している気がします。
最終手段としては体内依存としますが、可能な限り回収を試みます。
そんな時に使用するデバイスやテクニックを中心に紹介します。
目次
・ワイヤーが切れやすいケース
ワイヤーがステントと石灰化に挟まった時
ケースとしては母血管に石灰化を伴い、側枝を保護するためにワイヤーを通している場合があります。
保護(プロテクト)用ワイヤーを側枝に入れた状態で母血管の狭窄部に対してステント留置すると時折、石灰化とステントにワイヤーが挟まれて引っ掛かってしまいます。
その結果、抜去困難となり、強引に引っ張たり、回すと離断しやすくなります。
ステントと石灰化に挟まれ、抜けなくなった場合にはマイクロカテーテルやバルーンを用いて抜去を試します。マイクロカテーテル等をステントのproximal edge(手前の端)まで進めて、ワイヤーを真っすぐ引きます。
この時に作用反作用の法則でガイディングカテーテルがcoronaryに入り込みやすくなるので注意が必要です。
ポイント
石灰化がある時のステント留置は注意
スタックしたらバルーンやマイクロを用いる
強引に引かない、回さない
引く時はガイディングのDeep engageに注意
ロータのバーを進めているとき
ロータを使用する時にも注意です。
ロータのバーを進めている時にはワイヤーは作用反作用で抜けようとします。
しかし、ワイヤー先端が石灰化などで引っ掛かっている状態で、バーを進めるとワイヤーに負荷がかかり、離断してしまうことがあります。
先端の不透過部分、柔らかい部分が残存してしまうことがあります。
バーを進めていてワイヤーが抜けないようにセカンドが調整するのも大事ですが、ワイヤーのテンションがかかりすぎないように確認しながら1stドクターのサポートをしなければいけません。
セカンドをやるコメディカルは医師が強引に進めようとしていたら、気まずくても手技にStopを声かけた方が良いです。
ワイヤー離断する方が後々が大変です。
ポイント
ロータのバーを進める時にワイヤーのテンションに注意
強引にバーを進めるとワイヤー離断の可能性
ワイヤーがスタックしていそうなら手技を止めて確認
私自身はロータバーを進めているときのワイヤーが離断するケースの方が経験多いです。
・ステントが脱落しやすいケース
最近のステントは技術の向上によって脱落しにくくなったようです。
私自身はステント脱落は見たことがありません。
(思わぬ位置での留置は見たことがありますが...)
脱落しやすいのは
・血管分岐が急峻なところを進める時
・石灰化病変を進めている時
・蛇行血管を進める時
・留置済みのステント内を進める時
こういった場合に無理やり、強引にステントを進めようとすると脱落しやすくなります。
長いステントほど蛇行や狭窄に引っ掛かりやすいので注意が必要です。
また、冠動脈入口部にアンダーサイズかつ短いステントを置くと大動脈に脱落する可能性があるので注意!!
ポイント
強引にステントを進めない
前拡張を再度行う
エクステンションカテーテルを使用する
Buddy wireなどで血管走行を変える
脱落したステントに対しても可能であれば回収を試みますが、、、
テクニック的には小径バルーンを拡張し、脱落したステントに圧着した状態にしてガイディン内に引き戻す方法もありますが、、、
ガイディング径によってはガイディング内に入らない場合がありますし、バルーンとの圧着が不十分だとさらに違う位置で脱落させてしまう可能性もあります。
後で書きますがスネアなどを用いることもあります。
しかしステントが壊れ、無理にガイディング内に入れようとするとガイディング先端が破損し、シースから抜けなくなることも考えられます。
また、回収しないであえて留置してしまうこともあります。ステント脱落が起きた時に比較的安全な位置で血管壁に圧着させてしまいます。
場合によっては適切な血管内腔に合わせたステントを追加して、血管壁に圧着させます。
・離断したガイドワイヤーの回収方法
ループスネアの種類
ループスネアには輪っかが一つのOne Loopタイプの物や輪っかが3つあるタイプがあります。
One Loopタイプでは
Medtronic社製「Goose Neck™ Snares」
メドトロニック ホームページより
https://www.medtronic.com/jp-ja/healthcare-professionals/products/cardiovascular/snares.html
ループサイズ(mm):2,4,5,7,10,15,25,30,35
Merit Medical社製「ONE Snare™」
メリットメディカル・ジャパン ホームページより
https://www.merit.co.jp/product_item/one-snare/
ループサイズ(mm):2,4,5,7,10,15,20,25,30,35
輪っかが3つあるタイプでは
Merit Medical社製「EN Snare®」
メリットメディカル・ジャパン ホームページより
https://www.merit.co.jp/product_item/en-snare/
などがあります。
血管径に合わせてスネア選択をします。
ループスネアの使用
ループスネアの使い方としては。。。
百聞は一見に如かずなのでYouTubeの動画を紹介します。
英語ですみません。ですが、動画を見ればなんとなくわかるかと思います。
ワンループタイプも3つ輪っかがあるものも基本的には使用方法は同じです。
3つ輪っかがある方が捕捉しやすいですが、その分血管内で広範囲に広がります。
その点には注意が必要です。
スーテニール(Soutenir)の使用
スーテニールはマイクロバスケットタイプです。
マイクロカテーテル先端から出すとバスケットが開きます。
そのバスケットにワイヤーを絡ませることで捕捉し、マイクロカテーテルごと回収します。
サイズは3,5,7mmがあります。
末梢に離断したワイヤーがあるとやや使用しにくいです。
朝日intecc社製「Soutenir」
朝日インテック ホームページより
https://medical.asahi-intecc.com/products-interventional-radiology/soutenir.html
マイクロカテを離断したワイヤー付近まで運び、マイクロカテ内からスーテニールを出します。
スーテニールのバスケットが開くのでその状態でワイヤーを捕捉し、マイクロカテに引き込むことで回収することができます。
注意しなければいけないのが使用するマイクロカテです。
この回収デバイスはマイクロカテーテルの内腔が最低0.5mmあるものでなければいけません。
スペック上ではASAHI Corsair Pro, カネカ Mizuki, Terumo zizai, ネイチのTeleportどれも入りません。
径の広いマイクロカテーテルでないと使用できません。
がしかし、
実臨床上で一部のマイクロカテーテル内にスーテニールが入り、バスケットも展開することができました。(経験ではTeleportが可能でした)
ここで重要なことがあります。
展開ができても補足した状態ではマイクロカテーテル内には回収できませんでした。
やはり、ワイヤーを捕捉できてもマイクロカテが細いため、収納することはできなかったのです。
とはいえ、収納できなくても補足して回収する目的は達成できました...
マイクロカテに収納できない場合は大動脈内に落とさないように最大限注意して回収する
これはループタイプのスネアを使用する場合にも言えます。
ポイント
スネアやバスケットはマイクロカテを用いる
ワイヤー捕捉後はマイクロカテに収納して回収
マイクロカテに収納できない時は絶対に大動脈内に落とさない
・テクニックで回収
マルチプルガイドワイヤーテクニック
スネアが無い時の方法としてマルチプルガイドワイヤーテクニックを用います。
これは数本のガイドワイヤーを末梢まで進めて、トロッカーでひとまとめにし、ワイヤー同士を絡め合わせることで離断したワイヤーを回収するテクニックです。
この方法でしたらスネアやバスケットが無くてもワイヤーを数本出すことで回収できます。
この方法を用いる時にはエクステンションカテーテル(子カテ)を使用します。
製品としてGuideLiner, Guidezilla, Telescope ,飛脚−HIKYAKU, EZ Guideなどがあります。
子カテを残存ワイヤー近傍まで運び、数本のワイヤーで絡ませることで捕捉して子カテ内に回収します。
この方法でもワイヤーを大動脈内に落とさないように注意してください。
自作ループスネア
スネアやバスケットが無いならスネアを作ってしまおう。
という発想があります。
ポイント
300cm 0.014inchのガイドワイヤーを折り、子カテ内に挿入してワンループタイプのスネアを作ります
ループ部分を少し折って角度を作ることで、よりループスネアに似たものを作成することができます。
YouTubeに作成動画があるので参考にどうぞ。
動画では子カテをカットしていますが、長さが十分であればカットしなくて大丈夫です。
最終手段 体内異存
離断したワイヤーを回収できそうにない時には最終手段として体内異存させます。
医師にもよりますが、新しいワイヤーを用いて残存しているワイヤーを奥に押しやります。
場合によってはパーフォレーションした時に行うコイル塞栓術に似た状態になります。
血流が途絶えること、今後途絶えることがあるのでST変化をもたらす可能性があります。
体内異存によって心臓の一部が虚血になることもありますが、、、
例えば、回収しようとして大動脈内に落としてしまったら脳へ流れて脳梗塞を起こしてしまうリスクもあります。
何のリスクを一番に考えて手技を行うかが医師によってことなります。
様々なケースを想定して準備しましょう。
・脱落したステントの回収
ステントが思わぬ位置で脱落した場合は上でも書きましたが、小径バルーンで圧着させた状態で回収したり、回収をあきらめて留置してしまったりします。
しかし、スネアを用いることで回収することも可能な場合があります。
その場合は基本的にワンループタイプのスネアを使用します。
ループ内にステントを入れて捕捉し、回収する。
いくつか注意事項はありますが、スネアを用いるのが一番ステント回収には有効なのではないでしょうか。
こちらも百聞は一見に如かずです。
YouTubeに動画がありました。こちらは日本語で解説してくださっているのでとてもわかりやすいです!!
シース内へガイディングカテーテルごと収納する方法も紹介してくださっています。
余談にはなりますが、、、
CTO治療の時にエクスターナリゼイション(externalization)やプルスルー(pull through)、ランデブー(rendezvous)といったガイドワイヤーを対側のプローチに通して体外まで導く方法を行う事がしばしばあります。
この時にスネアを用いることで対側からガイドワイヤーを体外まで誘導することが容易になります。
マイクロカテやガイディングカテにガイドワイヤーを通さなければいけないですが、スネアで容易に捕捉できるのでこのシステムの確立がスムーズになります。
このあたりの解説もいつかはやろうかと思っています。。。
ランデブーは○○○○カテーテルが必要!