BK領域は手技に縛りが多く、治療方法が限られます。
また、治療しても再発するケースも多く容易ではありません。
しかし、治療をしなければ予後が悪化するので避けるべきではない物です。
CLIで治療せずにいると1年で死亡率が20%程度、5年で40%程度あります。。。
今回はそんな膝下領域(BK)領域について特徴や適応、アプローチや行うテクニックなどをまとめます。
・BK治療の適応と特徴
下肢においてPAD(末梢動脈疾患)が重症化したものをCLI(重症下肢虚血)といいます。
CLIになると足の末梢、先端に血液が流れなくなり、壊死してしまいます。
足先を切断しなければいけなくなることが少なくなく、予後が悪いです。
また、レトロアプローチを行うBi-directionalの構築が簡単ではなく、治療戦略が限られる結果、治療成績が悪くなります。
治療がそもそもPOBAのみしか行えず、開存率(Patency)が悪い領域となっています。
膝下領域の再狭窄率が
3か月で73%、12か月で82%と多くが再狭窄してしまいます。
Eur J Vasc Endovasc Surg. 2012 Oct;44(4):425-31.
PMID: 22938944 DOI: 10.1016/j.ejvs.2012.07.017
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22938944/
ざっくり挙げると以上の適応と特徴があります。
ポイント
- CLI(重症下肢虚血)の時に治療適応
- Bi-directionalの構築が容易ではない
→手技成功率の低下 - Patencyが非常に悪い
- POBAのみでステント留置ができない
なのに、Patency、開存率が悪い、、、
なかなか辛い領域となっています。
・CLI治療の前に・・・
創傷管理と創傷治療が大事です。
創傷ケアや抗生剤、ドレナージなどを行います。
感染や炎症が起きているまま血行再建を行うと、血流に乗って感染原因が全身に回ってしまい、敗血症になってしまうことがあります。
なので基本として安静、除圧を行って傷を治すことが大事です。
カテーテル治療を行って、患者さんの全身状態が悪化してしまったら元も子もないですね。
感染管理が落ち着いた後に血行再建を行い、血流を増やすことで傷の治りも良くなっていきます。
・さまざまなところから穿刺
BK領域はBi-directionalの構築が難しく、手技成功率が落ちます。
CLIではlong CTOであることも多く、多数病変であることもあります。
しかしそこで諦めるのではなく、やはりレトロアプローチを検討します。
EVT領域では冠動脈と比べたらレトロアプローチは容易です。
穿刺部位としては足背動脈(足の甲)や足底動脈(足の裏)、足の指の間などがあります。
この領域の良いところの一つがアプローチ部位がいくつかある点です。
いくつかあるアプローチ部位を用いて病変に対抗します。
Distal アプローチ部位
- ATA:前脛骨動脈
- PTA:後脛骨動脈
- PA:腓骨動脈
- Dorsalis Pedis Artery:足背動脈
- Plantar Artery:足底動脈
- Dorsal metatarsal Artery
など
【EVT】アプローチ方法 山越え?表パン?
・使う可能性のあるテクニック
アプローチについては上で上げましたが、他にもBK領域で使用する可能性のあるテクニックを簡単に紹介します。
- ランデブーテクニック
Bi-directionalを組むことが多く、その際にこのテクニックを使用します - Needle Cracking
レトロアプローチをする時の穿刺の際に使用するテクニック
またはワイヤーが石灰化部を通らない時に使用するテクニック
石灰化を体外から穿刺針で破砕するものです - ナックルワイヤーテクニック
ワイヤー先端がループした状態で血管内を進めるテクニック - パラレルワイヤーテクニック
ワイヤーを2本使いながら進めるテクニック
相互にワイヤーを目印にして進める - IVUS guide
IVUSをで血管内を見ながらワイヤー操作を行う - Stiff ワイヤーへ変更
徐々に固いワイヤーに変更して石灰化病変を進めていく
穿孔する事に注意する必要がある
・SPP(皮膚灌流圧)を活用して治療評価
メモ
皮膚灌流圧:SPP(Skin Perfusion Pressure)
基準値:80~90mmHg
足の血圧を測ることで毛細血管の血流評価が行えます。
一般的にSPPの値が50mmHg以下あれば末梢動脈疾患(PAD)が疑われます。
40mmHg以上あれば潰瘍の治療が有効とされ、それ以下であると完治は難しいとされています。
30mmHg以下であると、より完治は難しく、壊死が始まってしまう事もあります。
なのでBK領域の治療を行い、足の血流の増加を目指します。
治療後にSPPが40mmHg以上になれば有効な治療とされ、傷の治癒が見込めます。
しかし、血行再建後でもSPPが30~40mmHg以下であると、有効な治療ではないとされることがあります。
10mmHg以下であるとまず、治癒はしないです。
なので、治療後にSPPを計測することは有効な治療であったかの指標になり得ます。
ポイント
SPPは血行再建の評価の指標になり得る
治療後40mmHg以上になるように目指す
40mmHg以下では治癒が悪い
治療後に35mmHg以上を得られていても回復が見られない場合は、血管以外に問題がある場合があります。