心筋生検は生体において心筋の組織学的情報を得る方法の一つで、
心筋疾患の診断においてなくてはならない検査の一つです。
劇症型心筋炎、心筋症などのカテーテル検査時に原因検査のためにされる検査の一つです。
今回は検査方法の概要をまとめます。
ちなみに、心筋生検は日本発祥のようですよ!!!
誇れますね!
・心筋採取部位
心筋生検で最も採取される部位は右室から採る心室中隔です。
臨床検査的には左室側からの採取でも問題ないが、
簡易性、安全性から右室側から採取されることの方が多いです。
静脈系の方が止血が容易、右室側からの方が循環動態が安定しやすいなど。
また、同時にスワンガンツカテーテル検査も同時にやることも多く、
アプローチ部位も大腿静脈の一か所で済むなどが理由としてあるようです。
ポイント
心室中隔
(右室からの採取が多い)
・アプローチ部位
一般的には静脈系からのアプローチが多いです。
右大腿静脈か内頚静脈からの穿刺が多いです。
内頚静脈からのアプローチの方が安静時間も短く、検査当日退院も検討できる余地があります。
しかし、右心カテーテル、スワンガンツカテーテル検査も同時に行う事が多いので
穿刺部位を増やしたくないこともあり、鼠径部からのアプローチが多いです。
鼠径アプローチのデメリットとして
右房でUターンして右室にバイオプシーカテーテルを挿入しなければいけません。
バイオプシーカテーテルは操作性が非常に悪く、そのまま(ベア)では右室にアプローチできません。
なので、プレシェイプされたシースを用いることが必要です。
ベアアプローチとは:サポートや誘導カテを用いずに通す/クロスする事
ポイント
主に右大腿静脈から(内頚静脈も可)
鼠径部アプローチ時にはプレシェイプのシースを使用
・使用シース、カテーテル
ここでは大腿アプローチをベースにします。
シース
使用するシースは前述した通り、プレシェイプのあるものです。
メディキット社製のものやテクノウッド株式会社が販売しているもなどがあります。
製品によってシェイプの形状が異なりますので医師の意向によります。
感覚的には曲がりの強いメディキット社製のようなものが有効かと。
シェイプしているものを使用するので右房で湾曲するようにロングシースを留置します。
使用するバイオプシー鉗子の有効長に合ったシース長を選択してください。
ポイント
ロングシースかつ先端がシェイプしてあるものを使う
バイオプシー鉗子
バイオプシー鉗子は鉗子部の形状や長さなどいくつか種類、製品があります。
テクノウッド社から 5,6,7Fr 有効長50,105cm
Cordis社から 5.5,7Fr 有効長50,104cm
大正医科器械株式会社から 6,7Fr 有効長50,110cm
などがあります。
心腔内での操作をしやすく中隔に向きやすいように、体外で若干のシェイプを作ることができます。
ワイヤーほどシェイプが付きやすくはないですが、シェイプを作ってから中隔にアプローチもできます。
・簡略手順
大腿アプローチでの簡単な手順をまとめます。
メモ
- スワンガンツカテーテル時に使用していたシースと入れ替える
(主に同サイズのロングシースと入れ替え:脇漏れ防止のため) - ガイドワイヤーを用いてシースを誘導する
- プレシェイプのシース先端がRVに誘導されるように挿入
- 少量の造影でシースとRVの位置関係を確認
- 鉗子を誘導してRV内でゆっくり開き軽く中隔に当てる
(閉じたまま当てないのは穿孔の可能性があるから) - 把持した後は素早く引き抜く
(引き抜き時に陰圧が発生し、マイクロバブルができることもあるためシース内のへパフラッシュが好ましい) - 適宜造影で位置や穿孔を確認
- 2,3回採取する
- 採った検体はホルマリンに付けて検査に回す
- スワンガンツカテーテル時に使用していたシースと入れ替える
生検鉗子(バイオプシー鉗子)も少しシェイプを作れるので
中隔方向に向きやすいように湾曲を作ることが多い。
・合併症
心室穿孔、心タンポナーデ、(右)脚ブロック、血圧低下などが起こり得ます。
特に心嚢液貯留が認められるようであれば、
速やかにエコーガイド下の穿刺ないし直視下心膜切開によるドレナージが必要です。
術後に血圧低下や頻脈が認められた場合にはエコー検査などをすると良いです。
合併症各々に対しての対応を検討しておく必要があると思います。
ドレナージやノルアドレナリンや硫酸アトロピンなどの薬剤、一時的ペースメーカ対応など想定しておく。
モニタリングで血圧や心電図変化、患者さんの顔色、気分にも留意する。
ポイント
・心室穿孔、心タンポナーデ、ブロック、血圧低下など
・合併症時に対応できるように薬剤、医療機器を用意しておく
・モニタリングもしっかりと行う
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