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下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)に対する検査・評価・重症度分類

・ABIとは(ankle brachial index)

ABIは足関節上腕血圧比と日本語訳では訳されます。

メモ

ABIは上腕と足首との血圧の比を求めることで動脈硬化を調べる検査です。


ABIは次の式で求まります。

ポイント

ABI=足首の血圧 / 上腕の血圧(左右で高い方)
正常値0.9<ABI<1.4

この式から左右の下肢、各々のABIを求めて血流評価を両足で行います。

また、硬化のない動脈であれば通常、足首の血圧は上肢の血圧よりも高いため、ABIは1以上になります。(正常値:0.9~1.4)
ちなみに、0.91~0.99はボーダーラインと表記されています。
しかし、プラークや石灰化などで足の動脈の内腔が狭くなると血流が悪くなり足首の血圧は上肢の血圧よりも低くなります。
そのためABI<1となります。

ABI>1.4では、高度な石灰化が下肢にあることが想定されます。
血流はあるが石灰化があるため、血管抵抗が上がっている状態です。

値別基準値

ABI>1.4 : 高度石灰化の可能性
0.9<ABI<1.4 : 正常範囲
ABI<0.9 : 閉塞、狭窄の疑い



予測指標としてABI<0.9、ABI>1.4は心血管疾患の予測指標ともなっています。

ABIが0.9未満であれば下肢の動脈に狭窄、閉塞の存在が予測されるので 下肢造影を行って精査することがあります。

・PWVとは(Pulse Wave Velocity)

PWVは脈波伝達速度と訳されます。
心臓の拍動(脈波)が血管壁や血液を伝わって手や足の末梢まで伝わる速度の事をいいます。
動脈が石灰化などで硬化するとその伝達速度は速くなるので、測定結果から動脈硬化の程度が予測できます。

脈圧は血管が柔らかいと圧が吸収されるので伝達速度が遅くなりますが、血管が固いと圧が吸収されにくいため末梢まで伝わりやすくなります。

ポイント

PWVが遅い:血管が柔らかい
PWVが速い:血管が固い



数値としては
正常:1,400cm/s未満
異常:1,400cm/s以上・・・動脈硬化の疑い

baPWV法(brachial-ankle法)

測定方法は「baPWV法(brachial-ankle法)」という方法を一般的には用います。
四肢(両上腕、両足首)に巻いた血圧測定カフの容積脈波からPWVを測定する方法で、ABIと並行で計測でき、簡便なのでこの手法が用いられることが多いかと思います。
上腕~足首の距離(2点間距離:ΔL)を上腕と足首の脈波立ち上がりの潜時差(時間差:Δt)で割る事で求めます。

メモ

 baPWV = ΔL / Δt ( cm/s ) 


ΔLは推定値を用いて求めます。

血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドライン より引用

参考文献:血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドライン P33~P39参照
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2013_yamashina_h.pdf

・SPP(皮膚灌流圧)

SPP (skin perfusion pressure)はレーザードプラセンサーとカフを用いて皮下1mm程度の灌流圧を計測するものです。
カフを加圧し血流を遮断し、徐々に空気を抜いて血流が再び戻る値を皮膚灌流圧として測定する検査です。

正常値は80~90mmHg程度
50mmHg未満では末梢動脈閉塞が疑われる
40mmHg未満では創傷治癒の遅延が見られる

メモ


計測手順

  1. 仰向けで横になってもらう
  2. 足先(甲または足底)にレーザーセンサーを取り付ける
    保護のために足にラップなどを巻いた上から取り付ける
  3. カフを足に巻いて測定を開始する

 

・Rutherford分類

Rutherford分類
重症度 細分類 臨床所見 客観的基準
無症状 運動負荷試験では正常
  1群 軽度の間欠性跛行 運動負荷試験は可能
負荷後APは50mmHg未満で血圧より25mmHg以上低下
2群 中等度の間欠性跛行 細分類1と3の間
  3群 重度の間欠性跛行 運動負荷試験は終了できず、負荷後APは50mmHg未満
4群 虚血性安静時疼痛 安静時APは40mmHg未満、
足関節部および足背部でPVRはほとんど平坦、
TPは30mmHg未満
  5群 小範囲の組織欠損
足部全体の虚血に難治性潰瘍、局限性壊死を伴う
安静時APは60mmHg未満、
足関節部および足背部でPVRはほとんど平坦、
TPは40mmHg未満
6群 広範囲の組織欠損
中足骨部に及び足部の機能改善は望めない
細分類5と同様

Rutherford RB, Baker JD, Ernst C, et al : Recommended standards for reports dealing with lower extremity ischemia: revised version. J Vasc Surg 1997;26(3): 517 – 38.より引用

AP:足関節血圧 Ankle-pressure
TP:足趾収縮期血圧 Toe-pressure
PVR:容積脈波記録法  pulse volume recording

Rutherford分類は症状や数値ベースを用いた分類になっています。後述するFontain分類よりも詳細に分けられています。
細分類(カテゴリー)化されていることもあり、カルテに表記しやすく、わかりやすくなっています。


注意として重症度がガイドラインと表記が異なっています。下にガイドラインに記載されているものを載せておきます。

・Fontain分類

Fontain分類
Ⅰ度 無症状
Ⅱ度 間欠性跛行
Ⅲ度 虚血性安静時疼痛
Ⅳ度 潰瘍又は壊疽

2022 年改訂版 末梢動脈疾患ガイドラインより引用

Ⅰ度は下肢動脈の狭窄を認めても無症状の分類です。症状があったとしても軽度なしびれや冷感程度で、休めば比較的短時間で回復します。

Ⅱ度は間欠(間歇)性跛行が見られます。歩いていると歩行を中断せざるを得ないほどの痛みが伴うことがあります。休み、時間経過で改善します。狭窄が進行していくと痛みを伴うまでの時間が短縮していきます。

Ⅲ度は安静時であっても疼痛、痛みを伴っている状態をいいます。既に狭窄が進行しているのでABIやSPPなどを計測すると低値になっていることが多いです。

Ⅳ度はCLTI(包括的高度慢性下肢虚血)の状態と言えます。治療をしなければ疼痛や潰瘍の改善は見られず、そのまま放置しておくと壊疽を来し、切断をしなければいけなくなります。また、文献でもCLTIまで進行すると予後は悪く、長期生存率が低下します。

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