DCA(Directional Coronary Atherectomy)は方向性冠動脈粥腫切除術と訳され、主に脂質性のようなプラークを削る目的のデバイスです。
プラークを削り取ってしまい、十分な内腔を得られればステントレス、ステントを留置せずに手技を終えることも見込めます。
ステントを置くことになったとしても物理的にプラークを取り除くので、十分な内腔径を得られる可能性があるメリットの大きい手技です。
しかし、メリットが大きい分手技が難しいという一面もあります。
カッターをプラークに押し当てて削るので仮に正常部分に間違えて当ててしまうと穿孔や解離、破裂などを起こしてしまいます。
なのでしっかりとどこにプラークがあり、カッターがしっかりと当たるのか十分すぎるほど確認する必要があります。
そこで今回はプラークを削るための方法をまとめます。
DCA(方向性冠動脈アテレクトミー)がどうのようなものかはYoutubeに分かりやすい動画がありましたので乗せておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=PzFLlz7r5sA
・サイドブランチ法
最も用いられる方法が「サイドブランチ法」かと思います。
IVUSを使い、冠動脈走行や心臓の構造などの解剖学的構造を元にアプローチする方法です。
なのでIVUSを使用する事が前提です。IVUSを使いながら、透視装置でのViewと一致させて行う方法となっています。
ポイント
・IVUSを使う事が前提の方法
・解剖学的位置関係からプラーク位置を同定する方法
LMT-LAD病変
特に有用な病変がLMT-LAD病変です。
LADのProximalから分岐する対角枝(AHA#9:diagonal)は心外膜に対して9時方向に分岐しています。
そして、左回旋枝(LCX)は一般的にはdiagonalから反時計回転方向に30度程度の位置からLADに合流してきます。
中隔枝(septal)はdiagonalから反時計回転方向120度程度の位置からLADに合流します。
※あくまでも程度なので実際には誤差はあります。
この冠動脈走行は多くの患者さんで統一なので最もスタンダートな方法となっています。
シェーマを示すと下図のようになります。
手順を示します。
- IVUSで観察(記録)
- IVUS上でDiagonalを見つける
- 画面を回転させて9時方向にDiagonalを合わせる
- その状態で病変を観察
この時にLCXや中隔枝がどの向きから合流するか確認
心外膜も12時方向に見えるか確認 - プラークが何時方向にあるか確認する
ポイント
Diagonalを同定し、9時方向に合わせることが重要
LCX病変
前提としてLCXの治療では起始部(LMT)に近い所に対して治療をします。
LCXの途中でも不可能ではないですが、十分な目安となる血管径が無いことやプラーク位置を同定することが難しいことがあるので基本的にはLCX起始部付近で使用します。
LCX病変で重要な解剖学的構造は、静脈、心房枝、鈍角枝(OM, PL)、LADです。
注目はLADと静脈です。
LADの合流を3時方向にすると概ね12時方向で静脈が観察できます。
その状態でLCXを観察すると何時方向にプラークがあるか予測できます。
※LCXは房室間孔を走行するため、心房枝やOMは心外膜方向に走行することも多いので注意が必要
LCXにおいてサイドブランチ法だけではプラーク位置の同定はやや不安なので、透視でも確認しながら確認します。
可能であれば、後にまとめるワイヤーバイアス法も用いて微調整を行います。
手順を示します。
- IVUSで観察(記録)
- IVUS上でLADを見つける
- 画面を回転させて3時方向にLADを合わせる
- その状態で病変を観察
LADやOM, PLなどの合流を確認
静脈(心外膜)も12時方向に見えるか確認 - プラークが何時方向にあるか確認する
- スパイダービュー(LAO caudal)で位置関係を確認
ポイント
LADを同定し、3時方向に合わせることが重要
LAO caudalでも確認する
RCA病変
RCAで重要な解剖学的構造は右室枝(RV branch)や心房枝(Atrial branch)、円錐枝(Conus branch)などです。
しかし、患者さんによって走行が変わることが多いので参考程度にはなります。
なので、ワイヤーバイアス法やルーメンバイアス法と併用する必要があります。
LCXと同様に起始部で削るのに使うことが多いと思います。
しかし、RCAの起始部は大動脈と直結しているので、誤って正常血管部を削ると大動脈解離を引き起こしかねないので十分すぎるくらいに確認してください。
RCA近位部での使用ではSinus nodeやConus branchがプラーク位置の同定に有用ではあります。
ただし、透視でRCAからどのように派生しているか照らし合わせながらIVUSで確認します。
ポイント
RCAではサイドブランチ法だけでなく、他の方法と併用する
・ワイヤーバイアス法
ワイヤーバイアス法もIVUSを併用した方法となっています。
IVUSの探触子(観察部:超音波が出ている所)とガイドワイヤーとの位置関係を利用します。
探触子とガイドワイヤーが重なる位置を透視で探します。
その部位のIVUSを観察して探触子に対してプラークがどこにあるのか見ます。
しかし、この重なっている場合の見え方では、透視上で探触子がガイドワイヤーの手前にあるのか、奥にあるのかはわからないです。
なので探触子に対して、プラークが左右上下どこにあるのか同定できません。
次に、透視上で探触子とガイドワイヤーが重ならない場所に移動させ、描出することで重なっていた時にどちら側から見ていたかわかるようになります。
どちらから見ていたかわかるようになればプラークエリアが同定できます。
※透視のviewは固定のままが前提です(主にRAO caudal)
手順としては
- 探触子とワイヤーが重なる場所を探す
- IVUSで何時方向から見ているか確認(手前か奥かの2パターンとなる)
1.の場所でのプラークエリアも確認 - 探触子とワイヤーが重ならないところを探す
- ワイヤーと探触子の上下関係の位置を確認
- ワイヤーが上か下かで2.の手前か奥かがわかる
- プラークエリアを同定できる
ポイント
主にRAO caudalを使用
探触子とワイヤーが重なる点と重ならない点で描出する
2つの描出像からプラークエリアを同定
・ルーメンバイアス法
血管内腔やガイドカテーテルとガイドワイヤーやIVUSの探触子の位置関係を用いる方法です。
透視で血管内壁やGCの内腔壁にIVUSが当たっている所を目印にしてプラークエリアを推定します。
図で示すと次のようになります。
ルーメンバイアス法のみでは同定が困難です。透視装置のviewにも左右されるので、
IVUSを用いて血管走行やプラークエリアと照らし合わせながら行います。
なのでサイドブランチ法やワイヤーバイアス法と併用する必要があります。
ポイント
ルーメンバイアス法だけでは同定は困難と思うべき
サイドブランチ法やワイヤーバイアス法と併用する
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