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FFR とは? 少し深い話まで。(fractional flow reserve)

ポイント

エビデンスレベル【A】 推奨クラス【Ⅰ】



2018年にガイドライン改正で高い評価になった「FFR」「iFR」

このガイドライン改正によって機能評価を行う施設が増えています。


造影画像を見て、狭窄度が75%以下かどうか判断する「目視」では十分な冠動脈の狭窄を判断できないとされています。

ですのでFFR、iFRを用いて、目視法だけでは判断が難しい中等度狭窄に使用しています。

ここでは、使用頻度が増えているプレッシャーワイヤーである「FFR」の基本的な事をここで理解し、事前学習をしましょう。



FFRとは? 測定目的は?

FFR (fractional flow reserve)は冠動脈狭窄の生理学的重症度を定量的に評価できる方法です。

つまり、FFRは狭窄度を数値化して評価ができるということです。



圧センサーが付いたワイヤーを病変よりも末梢側に通過させることで測定できます。


測定目的

  1.  冠動脈狭窄が心筋虚血の原因になるか否かの判断
  2.  冠血流低下の程度の評価
  3.  冠動脈血行再建術の適応判定および適切な治療方法の選択
  4.  予後予測 冠動脈血行再建術による冠血流の改善の程度の評価

ガイドラインより抜粋慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版)

ポイント

FFRは狭窄度を数値化して評価できる




FFRは最大充血を得る必要がある

FFRを行う時には最大充血を得る必要があります。


最大充血とは冠動脈が拡張しきった状態です。
⇒血管を弛緩させた(開かさせた)状態の事です。



なぜ最大充血を得る必要があるかというと

まず、Auto Regulationについて理解が必要です。


Auto Regulationとは?

一般的に血管はAuto Regulationが働きます。

血圧低下時には末梢血管を拡張して血流量を増やして血圧維持をしようとし、
逆に血圧上昇時には末梢血管を収縮させて血流を減らして血圧維持をしようとします。


つまり、Auto Regulationは血圧の自己調整機能といえます。
冠血流量は冠灌流圧が60 ~ 130mmHgの間はほぼ一定に保たれるようにAuto Regulationが働いています。
自己調整機能をホメオスタシスともいう事もあります。


このAuto Regulationが働いていると、血流低下が狭窄が原因によるものなのか、Auto regulationによるものなのか区別がつきません。
そのため、冠動脈に対して最大充血を得る必要があります。

最大充血を得た状態では血管が拡張しきっているので、Auto Regulationは働いていないことになり、FFRとして計測ができるようになります。


冠灌流圧と冠灌流量の比例関係

このAuto Regulationを取り除くと冠灌流圧と冠灌流量が比例関係になります。

狭窄が存在する冠動脈において


「最大限達成されうる血流量」



「狭窄が存在しない正常血管の血流量」

との比で示される灌流圧の比をFFRと定義します。


FFR=Pd/Pa
Pd:病変遠位部の圧 = 最大限達成されうる血流量
Pa:冠動脈入口部の圧 = 狭窄が存在しない正常血管の血流量

FFRは流量予備比で流量の指標ですが、計算上で圧で表せるので式ではPd、Paを使用します。


ポイント

  • FFRはPd/Paの比で表す
  • 比で表すためにAuto Regulationを取り除く必要がある
  • Auto Regulationを無くして冠灌流量と冠灌流圧を比例関係にする


最大充血を得る薬と投与方法

最大充血を得るために血管拡張薬を投与します。

主に使用されるのはATP(アデノシンⅢリン酸)、塩酸パパベリン、ニコランジルの3つです。
多く用いられている方法は ATP の持続静注法とパパベリンの冠動脈注入法です。


ここではそれぞれの薬と投与方法についてまとめます。


ATP 静脈投与

ATPは中心静脈あるいは点滴ルートから140 ~ 180μ g/kg/minの速度で持続投与します。

2 ~ 3分で最大充血に達し、投与中止後も1~ 2分間効果が持続して最大充血を得ることが出来るためFFRの引抜き圧測定に最も適しているとされています。


副作用としては気管支喘息や重度の閉塞性肺疾患の患者では、症状の増悪を来すことがあるため使用は控えた方が良いです。
また,稀に房室ブロックを生じることがあるため、注意が必要です。


また、静脈投与は全身に効果が血圧降下が起こるので体血圧の低下にも注意する。

ATP 冠動脈注入

静脈投与だけでなく、冠動脈に直接注入する方法があります。


投与量は左冠動脈に30 ~ 50 μg、右冠動脈に20 ~ 30mg である。冠動脈注入後5 ~ 10 秒後に短時間の最大充血を認めます。
しかし、効果持続時間は10秒程度ですぐ消失するため、引抜き圧の計測には適さない。


効果は冠動脈のみに限定されるので体血圧には影響は少ないメリットはある。

塩酸パパベリン 冠動脈注入

冠注パパベリンは、最大拡張薬としての Golden standard と位置付けられている。


投与後15秒後で最大充血に達し、その後30 ~ 60秒の間維持される。
引抜き圧曲線を測定する場合はこの30秒間程度の間に行う。


投与方法は、右冠動脈に10mg、左冠動脈に15mgを各々15秒かけて注入する。
稀にtorsade de pointes や心室細動などの致死性不整脈を誘発することがある


致死性不整脈が起きたとしても、除細動をかけて冷静に対応する。

ニコランジル 冠動脈注入

ニコランジルは左冠動脈に2mg、右冠動脈に2mg を各々30 秒ほどかけて注入する。
ATP静注投与と同等の最大充血を誘発することが出来るという報告がされている。

投与速度が速すぎると心室頻拍といった不整脈が出現することがあり、注意が必要である。


投与方法を表でまとめます

薬剤 投与経路 投与量 投与量
塩酸パパベリン 冠動脈内投与 左冠動脈 12mg 右冠動脈 8mg
ATP 冠動脈内投与 30~50μg 20~30μg
経静脈持続投与 150~180μg/kg/min
ニコランジル 冠動脈内投与 2mg 2mg




FFRの値ってどういうこと?

FFRの値はで表される。
比なので単位はないです。表記するなら%表記くらいです。

血管の手前(proximal)と末梢(distal)との圧の比から求められている。

下の図の狭窄がある場合、FFRの値は「0.7」となる。
この0.7は狭窄によって70%の血流しか得られていないという事です。
(ただし、最大充血時においての場合)

ポイント

FFRは圧の比で求められる
FFRの値は狭窄度を示す(最大充血時の場合)

有意狭窄率50%はここからきている

最大冠血流時では狭窄度が50%程度までは保たれるが、それ以上では低下するとされています。


安静時冠血流は狭窄度が80%程度までは一定に保ち、それ以上の狭窄で低下し始める。
これはAuto Regurationによって狭窄度80%までは血流を維持できるからです。



また、安静時と最大時の関係に注目すると、

安静時冠血流時で50%程度の時、最大血流量の予備量が低下し始めている
安静時冠血流時で80%程度の時、最大血流量の場合では1/2程度まで低下している。

ですので、50%以上の狭窄は有意とされており、80%で治療対象となる。

あくまでも治療対象冠動脈は狭窄率が75%以上の場合で、FFRのグレーゾーンは75~80%です。

ポイント

  • 安静時で80%以上の狭窄から血流が低下
  • 安静時80%の狭窄の時、最大冠血流では50%低下している



まとめ

今回はFFRについてまとめました。
FFRはエビデンス上でも推奨される手技となっています。


「この狭窄は有意だろうか・・・」


不要なPCI治療によって心臓トラブルのリスクが余計に増えます。
ですので、治療すべきか否かが大事になります。


そんな時に役に立つのがFFRです。


FFRを行い、必要か不必要かを見極め、
安全に、適切にPCI治療を行いましょう!!



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