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頭蓋内狭窄症(ICAS)の概要と治療 【PTA:経皮的血管形成術】

頭蓋内狭窄症:ICAS(intracranial artery stenosis) 
血管の狭窄は頭蓋内血管でも当然ながら起きえます。

その治療方法には薬を用いた内科的治療とカテーテルを用いた経皮的血管形成術があります。

実臨床経験上、頭蓋内狭窄症の血管内治療症例は多くはないですが、無いことはないので一度まとめておこうと思います。

治療システムも少しまとめますが、医師によってことなるので参考程度にどうぞ。

・疫学まとめ

日本人も含め、東洋人に多いとされていて、脳梗塞発症の大きな要因になっています。
日本の脳梗塞の1/3が頭蓋内狭窄症によるものとされています。

狭窄ひとつでも病態、形態がいくつかあります。
・プラークの破綻、伸展
・血行力学的要因
・血栓による閉塞
などがあります。

深掘りするなら解離や攣縮、動脈硬化などがあり、プラークによる閉塞や破綻した結果として狭窄を起こすなどといった要因があります。

好発部位は内頸動脈、中大脳動脈、脳底動脈です。
穿通枝を複数巻き込む狭窄が中大脳動脈ではよく見られます。
その場合は治療方針を慎重に検討する必要があります。


内科的治療でアスピリンやワーファリン投与による治療では再発率が高いという研究結果がある。
・Comparison of warfarin and aspirin for symptomatic intracranial arterial stenosis
Marc I Chimowitz 1, Michael J Lynn, Harriet Howlett-Smith, Barney J Stern, Vicki S Hertzberg, Michael R Frankel, Steven R Levine, Seemant Chaturvedi, Scott E Kasner, Curtis G Benesch, Cathy A Sila, Tudor G Jovin, Jose G Romano,
DOI: 10.1056/NEJMoa043033
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15800226/

また以下の条件患者では再発率が高い
収縮期血圧:140mmHg以上
総コレステロール値:200mg/dl以上
NIHSS:2点以上
発症から17日以内

ポイント

・東洋人に多い疾患
・プラークや動脈硬化などが原因
・穿通枝などの枝が多い血管では注意
・再発率も高い



・カテーテル治療のリスク

動脈硬化に対してはバルーンで拡張させた後にステント留置することがあります。
当然、患者の背景によってはバルーン拡張のみで治療を終えることもあります。


解離ではそのまま直接ステント留置をすることもあります。
攣縮(スパズム)では血管拡張薬の投与を行ったり、バルーン拡張を行う事もあります。


特にステント治療はリスクを常に警戒する必要があります。
ステントやバルーンを用いて治療したことによってプラークシフトが起きてしまうことがあります。
狭窄部位は拡張するも、穿通枝の閉塞や、解離の誘発に留意しなければいけません。


ステント治療に関しては解離、急性閉塞、切迫閉塞などに対するrescue stentingや他の治療法がないと判断される場合が望ましいとも言われています。
それだけステント治療はリスクが大きいものであり、推奨しにくい治療方法とも言えます。

なので状況にもよりますが、リスクの高さから内科的治療が第1選択とされています。
ステント治療を含めたPTAをするにあたっては神経内科を通す事が奨められています。(SAMMPRIS試験)


ポイント

・薬物治療が第1選択
・カテーテル治療は高いリスクが伴う
・緊急性が高い場合に行うのが望ましい治療
・治療の際には神経内科に相談が推奨



SAMMPRIS試験  概要webページ
循環器トライアルデータベース
https://www.ebm-library.jp/circ/trial/doc/c2005188.html

・手技の概要

  1. 親カテをできるだけdistalにデリバリーする
     (アコーディオンやスパズムに注意)
  2. マイクロカテとワイヤーをlesion crossさせる
  3. 必要であればwire exchangeさせてバルーン拡張
     (遠位血管径の8割程度が目安、十分lesionをカバーできる長さ)
     (長すぎると血管を無理に伸ばしてしまう恐れがある)
     (短すぎるとズレて拡張してしまうことがある)
  4. バルーン拡張はゆっくり行い、過拡張を避ける
     (1atm/10sec程度)
  5. 解離やrecoil、壁不整などがあればステントを考慮する
     (ステント長はlesionから3mm以上ヘルシーな位置に置くようにする.可能なら5mm以上)
     (ステント径はlesionの遠位、近位どちらかヘルシー部の+0.3~0.4mmが望ましい)
  6. 後拡張は強いrecoilが無い場合は推奨しない
  7. ステンティング後10分程度造影観察を行い、recoilや穿通枝の閉塞などに注視する

 

親カテをできるだけdistalにデリバリー
マイクロカテとワイヤーをlesion cross
バルーン拡張はゆっくり行い、過拡張を避ける
解離やrecoil、壁不整などがあればステントを考慮

ポイント

バルーン選択のポイント

  • 遠位血管径の8割程度が目安、十分lesionをカバーできる長さ
  • 長すぎると血管を無理に伸ばしてしまう恐れがある
  • 短すぎるとズレて拡張してしまうことがある

ステント選択のポイント

  • ステント長はlesionから3mm以上ヘルシーな位置に置くようにする
  • ステント径はlesionの遠位、近位どちらかヘルシー部の+0.3~0.4mmが望ましい

・内科的治療

内科的治療には主に抗血小板薬や抗凝固薬の使用が主となっています。

使用するのはアスピリンやワーファリンです。

WASID試験ではこの2つでの比較がされており、脳梗塞の発症には有意差がなかった。
しかし、重大な出血、心筋梗塞、突然死がワーファリン使用患者の方が多い結果となったため、アスピリンの使用頻度が優位となっています。

ポイント

内科的治療で使用する薬
・抗凝固薬
 →アスピリン
・抗凝固薬
 →ワーファリン
「アスピリンの方が優位とされている」

・治療後の抗血小板薬剤

DAPTは長めに続けることが多く、クロピドグレルやアスピリン、シロスタゾールなどが用いられています。

シロスタゾールは血管拡張と内膜安定化作用が認められているが、高度狭窄に対して効果が弱いためクロピドグレルとアスピリンも用いた3剤投与の場合もある。

CHANCE試験やPOINT試験などではDAPTは発症後21日までとすることが推奨されています。
しかし、CHANCE試験のサブグループ解析ではDAPTとSAPTに脳卒中再発予防効果の有意差は無かったとされている。

CSPS.com試験という研究もあり様々な期間、条件のもと抗血小板薬の適正使用の検討が模索されている。

基本的にはアスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールを使用する事が基準のようです。
しかし、どのように、どれくらいの期間使うなど確定的な内容としてはまだこれからのようです。

合わせて読む:サイト内リンク

最低限覚えたい脳血管【脳血管の解剖】 Part.1

できたら覚えておきたい脳血管【脳血管の解剖 Part.2】

頸動脈ステント留置術(CAS)とは?(病態編)

 

 

札幌西孝仁会クリニック 脳神経外科 (著)

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